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総会の運営について ―ある裁判から考える

総会の運営について ―ある裁判から考える

NPO法人日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』2024年1月5日付第496号「論談」より

マンション管理新聞」に管理組合の総会に関する興味深い裁判の判決が紹介されていた。これを題材に総会の運営について考えてみたい。

◆議長は全権者ではない
 事件は、旧理事会の方針に疑問を持った区分所有者(=原告)が役員に立候補、委任状を集めて総会に臨んだ。委任状の票数では争いがあり、4回の点検でようやく確定し、原告側が多数となった。
 それに対し、規約によって就任した最初の議長も、代わった次の議長も議案を採決せず、総会を終了させようとした。
 そこで原告が議長不信任・交代動議を出すが、これも採決されない。
 やむを得ず原告は動議を自ら会場に諮り、必要な多数の支持を得た。さらに役員選任も採決し、これも原告の推薦候補が当選に必要な多数を得た。
 それにも関わらず、執行部が退陣せず、業務を続けているので、裁判に訴えたものである。

◆区分所有者の意思尊重
 判決は9月5日に東京地裁であり、原告側の請求が認められた。執行部側は、規約に則った議長が採決していない、資格のない原告が採決を強行したなどと主張したが、容れられず、実質的に議案通過に必要な多数を得た原告側の採決を有効とした。
 いわば形式よりも実質的な区分所有者の意思を尊重したわけで、注目すべき内容である。

◆今後の展開に注目
 この判決をどう受け止めるべきか。多くの団体にありがちなことだが、管理組合でも総会の運営については規約や細則の文言などに厳密に合致しないと不適法として認めない場合が多い。
 確かに、それはそれとして尊重すべきだが、実質的な区分所有者の意思はどうかという点は、それ以上に重視される必要があるだろう。
 この判決は、そういう考えに立って、委任状の署名、押印や月日の記載についても、区分所有者が本当に委任しているかどうかという視点から有効性の判断をしている。
 この考え方はうなずける点が多く、総会の運営に当たっても参考になる。
 この事件は被告側が控訴したので、引き続き高裁での審理が行われる。私たちも関心を持って注目していきたい。

 

(NPO日住協論説委員会)

大規模修繕工事新聞170月号(24-2)