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防水・止水の基礎知識/ マンションの漏水の技術的解説(5)

 これまで4週に渡り樹脂注入が室内からの漏水補修に有効と解説してきましたが、注入する材料にも色々な種類があります。
 注入工事は実際に躯体の中で起きている現象が目視できないため使用する材料の物性を理解することは非常に重要です。
 漏水補修を目的として最も多く使われる注入樹脂はウレタン樹脂です。これは以下の物性があるためです。
  ウレタン樹脂以外にもエポキシ樹脂、アクリル樹脂、セメント系、水ガラス系などの注入材もありますが、ここではウレタン注入材について説明します。
 ウレタン注入材は、発泡ウレタン系、ゲル系、ソリッドウレタン系の3つに分類されます。
1.発泡ウレタン系
 水と接触すると極めて短時間で発泡して水の流れを止めることができるため常時止まらない漏水の補修に使用されます。即効性はありますが、強度が低く経時変化で柔軟性が失われるため防水効果は半年程度です。また水がない箇所では硬化しません。
 この物性のためドイツなどでは単体での使用を禁止しています。防水層に耐久性を持たせるには後述のソリッドウレタン系注入材を併用します。
2.ゲル系
 発泡ウレタン系は水と混ざらない疎水性ですが、ゲル系は水と混ざり合いゲル化する親水性で地下の構造物の外側の土中に分厚い防水層を形成する裏込工法に使用されます。
 大量の漏水にも対応できる工法ですが、環境負荷があるため近年はアクリル樹脂系に置き換わる傾向にあります。
 ゲル系の樹脂も水がないと硬化しません。また硬化後乾燥すると収縮するため水分の多い地中でのみ使用されクラックや打継への注入には適しません。
3.ソリッドウレタン系
 2液の化学反応で硬化することが前記2種類のウレタン樹脂との大きな違いであるソリッドウレタン系は地下以外の漏水箇所でも使用できます。ウレタン樹脂特有の弾性もあるため、主に地上のクラックや打継からの漏水補修に使われ躯体の挙動にも追随します。
 小さな漏水スポットにも対応し低コストですが、建物の漏水経路を想像しながら施工する必要があるため、施工には知識や経験が必要です。
 ウレタン樹脂(エステル系)は紫外線や水(加水分解)に弱いという性質がありますが、クラックや打継の内部には紫外線は届かず、水に長時間接して加水分解することもないので一度正しく施工すれば長期間防水性が維持されます。
 ただし硬化が遅いため常時止まらない漏水に対して注入しても流れ出してしまい効果がありません。そのような状況では前述の発泡ウレタン系を併用します。
 方法としては発泡ウレタン系で漏水を一時的に止め、同じ注入プラグからソリッドウレタン系を注入すれば水と接触した発泡ウレタンは硬化してますから、硬化していない発泡ウレタンがソリッドウレタン注入材で(押し出され)置き換わることにより耐久性の高い防水層が形成できます。

 

大規模修繕工事新聞 170号 24-2

 

 

裏込工法

発泡ウレタン系

ゲル系。右は乾燥して収縮した状

ソリッドウレタン系