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区分所有法制改正要綱案/管理・再生の円滑化に向け 所在不明者の除外、新たな財産管理制度の創設など

法務省法制審議会の区分所有法部会は1月16日、第17回会議を開き、令和6年通常国会に提出するための「区分所有法制の改正に関する要綱案」をまとめました。通常国会の会期は、1月26日から6月23日までの150日間。
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 所有者不明化や区分所有者の非居住化が進行している中、総会決議に参加しない所在不明の区分所有者について、総会決議の母数から除外し、出席者の多数決による決議を可能とします。
 現状では総会不参加者が反対者と扱われ、決議に必要な賛成を得るのが困難となっていることから、総会の円滑化のための仕組み作りとします。
 所在等不明区分所有者が適切な管理を行わなければ、建物が管理不全、危険な状態になりやすくなります。これを防ぐため、裁判所の関与の下で「所有者不明専有部分管理人」「管理不全専有部分管理人」「管理不全共用部分管理人」が管理を行う新たな財産管理制度を創設します。
 また空き家を集会室にするなど、管理組合法人にかぎり、区分所有権等を取得することができるようになります。国外居住の区分所有者は、専有部分の管理のための国内管理人を選べるようになります。これらも不在専有部分の保存・管理を行いやすくするための措置です。
 共用部分等にかかる損害保険金の請求権について、損害当時の区分所有者が転居している場合、請求権の行使が難しかったのですが、管理者が「旧区分所有者」の代理と、原告または被告になることができる規律も設けられます。
 現行法では、管理者の権限は個々の区分所有者からの授権にあり、区分所有者の変更で損害請求時の権利行使が困難となります。区分所有者のために訴訟追行する際、管理者の原告適格が欠けていると判断された裁判例もありました。
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 建替え決議に関しては、一定の事由がある場合、多数決要件を5分の4以上から4分の3以上に緩和されます。要件が厳格で老朽化した区分所有建物の建替えが進んでいないことから、多数決割合が緩和されることになります。
 一定の事由とは、①地震に対する安全性の不適合、②火災に対する安全性の不適合、③外壁、外装材等の落下の危険性、④給排水設備の衛生上の有害性、⑤バリアフリー法への不適合です。
 政令指定災害で大規模一部滅失した場合の建替え決議、建物更新決議、建物敷地売却決議、建物取壊し敷地売却決議は3分の2以上に緩和されます。
 建物が全部滅失した場合は、敷地共有者等集会で再建決議、敷地売却決議の要件が3分の2以上に緩和されます。
 被災からの早期復興を迅速に行うための仕組み作りが盛り込まれています。

 

大規模修繕工事新聞 170号2024-02