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第67回管理組合オンラインセミナー採録(後編)/第三者管理時代、リスクマネジメントは大丈夫ですか!?

一般社団法人全国建物調査診断センターが随時開催している管理組合オンラインセミナーの一部を紙上採録します。今回は12月24日にVimeoで公開した第67回セミナー「第三者管理時代、リスクマネジメントは大丈夫ですか!?」の前編です。今号で管理者の権限、利益相反、人材不足等について取り上げます。
 過去のセミナーはVimeoにより動画配信を行っています。全建センターホームページからご視聴ください。

統計上の数字にみる区分所有者の意識

佐藤 ここで、国土交通省が発表するマンション総合調査における統計上の数字を少し述べさせていただきます。
 グラフ①管理者の選任については、87.6%が「管理組合の代表者」、いわゆる理事長を管理者として選任しています。管理者は区分所有者から選ばれている、このやり方が一般的とみなされているわけです。
 一方、区分所有者以外の第三者が管理者となっている事例も、「マンション管理業者」「その他」合わせて6.4%ありました。
少ないじゃないかと思われるかもしれませんが、まずこの数字について、水島理事は率直にどのようにお考えになりますか?
水島 前回の総合調査は平成30年ですから、この時点ですでに6.4%もあったんですね。この数年でどんどん増えていますので、平成30年時点では第三者管理者の例が多いなという感じです。

佐藤 さらに同調査から引用しますが、「管理組合運営における将来への不安」(重複回答可)という設問で、回答として多かったのが「区分所有者の高齢化」53.1%、「居住者の高齢化」44.3%でした。
 これに関連するかのごとく、「修繕積立金の不足」31.2%、「大規模修繕工事の実施」27.8%と続きます。
 マンション問題は、住民と建物の「2つの老い」と言われますが、統計上の数字でも予想通りとして突き付けられていると言えます。
水島 区分所有者が高齢化するがゆえに、今後の収入が見込めないということで、修繕積立金の値上げに踏み切れない。大規模修繕工事でも改良・改善など先進的な取り組みができないという事態に陥ってます。

佐藤 「外部専門家の活用状況」(重複回答可)の設問では、「活用したことがある」が41.8%。管理組合が外部の専門家を活用しようという考え方が半数近くまで及び、決して珍しいものではなくなってきていると考えられます。
 ただ、このグラフ②「外部専門家の活用内容」(重複回答可)に関しては、「単発のコンサルティング業務」、何か問題が起こった、あるいは問題を解決したいときに単発で契約する割合が61.2%で、継続的にずっと相談しようという顧問契約的なものは20%程度しかありませんでした。
 また、外部専門家が管理者・理事長への就任」している割合は3.1%でした。
 注目したいのは、グラフ③外部役員についての検討状況です。外部役員の選任を「検討している」0.9%、あるいは「将来的に必要となれば検討したい」27.5%で、3割弱の管理組合は、外部、つまり第三者に役員になってもらっていいんだと思っているのです。
 なぜかというと、区分所有者が高齢化で人材がいない、役員のなり手がいないからです。こうした問題から外部の第三者に役員になってもらうのは仕方がない、今から検討したいと。実に3割弱のマンションで水面下のニーズがあるという数字が出ているわけです。
水島 高齢化も原因だと思いますが、そもそも「役員をやりたくない」という人も増えてきているんじゃないかなと思います。
 30代、40代の現役世代でも、家族との時間を取られるなら「役員やりたくないよね」と。
 あとは、管理組合運営では専門的なジャッジが求められるケースがあります。そこにストレスを皆さん抱えたくないという側面です。
 分譲マンションという言葉を捨てて高級賃貸マンションに住んでいる感覚―そのような感覚で第三者管理者方式が推進されているようです。

今後求められる管理方式のあり方

佐藤 マンションの管理というのは、建物の維持管理だけをすればよいのではなく、一つ屋根の下で過ごせるというコミュニティーがあって、初めて健全化が図られると思います。
 今、この二つの要素のどちらもが失われようとしています。
 私が長年顧問契約をしている築50年くらいの古いマンションの事例です。
 分譲時は自主管理でした。そのときからお住まいの方~ 80歳の方ぐらいが多いんですけど、少し前まで自主管理から管理会社に頼もうという話が出ていたんですね。
 それが、ここ最近そんな話は出なくなってきたんです。
 なぜかというと、だれかに頼もうという意思決定のために集まる部分、先ほど言ったもう一つのコミュニティーの方も難しくなってしまって。
 自主管理というのは、マンションの管理としては理想的な姿だと私は思いますが、管理組合自身が常に一定の若さというか、健全さがないと実は成り立たないものだと実感しているんです。
 理事会自体で意思決定を検討できるだけの余力がなくなると、第三者管理者に向き合うにしろ、管理会社に任せたら、いいようにやられてしまいます。
 だとすれば、まだ健全に物事を考えられる年齢のうちに、第三者管理者方式についてはっきり向き合って方向性を出しておくべきじゃないか。そういうふうに考えるようになりました。
 「正しい第三者管理者方式」という言葉が適当かどうかは分かりませんが、このままなしくずし的に広まるというのは、非常によろしくないことです。どのような形で管理組合さんがこの問題に対して方向性を出していくのか。
 実に10年20年後のマンション管理の未来がかかっていると言っても、私自身は過言ではないと思っております。
水島 第三者管理者制度が誕生したのは、役員の成り手不足なのか、それとも役員がやりたくないのか、またはもっと潜在的なものがあるのかなど、そういったところにもう少し着目していきたいと思っています。
 とはいえ、やはり今が転換期だなと考えております。
 理事会は管理組合で意思決定のための準備をする機関ですから、それができないのであればできる人に委ねる。しかしそれは自分の資産を他人に委ねることでもあります。
 自分の資産を自分で守るか、他人(プロ)に任せるか。最終的にその二択に近づいていくのかな、と思います。
佐藤 この問題については、国土交通省から発信される情報を踏まえて、いろんな角度から注意深く見守っていきたいと考えております。



第三者管理方式に関するお問い合わせはマンション総研 まで
一般社団法人全国建物調査診断センター マンション総研
TEL:03-6304-0278 eFAX:050-3142-9761
info@zenken-center.com

大規模修繕工事新聞170号(2024-2)