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管理会社が「管理者」をしてよいか

管理会社が「管理者」をしてよいか
NPO法人日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』2024年3月5日付第498号「論談」より

◆ 国交省「外部専門家の活用ガイドライン」
 国土交通省は「外部専門家等の活用のあり方に関するワーキンググループ」を開き、「外部専門家の活用に関するガイドラインの改訂」に、主に理事会非設置で管理業者が管理者に就任する場合の留意点を示した。
 WGでは区分所有者の意思を適切に反映する方法として「マンション管理上の重要な課題について協議する機関」の設置を提示した。
 そもそも管理業者の管理者のリスクを想定しつつ、それを容認する内容であり、私たちは断じて認めるわけにはいかない。
 本紙(集合住宅管理新聞『アメニティ』)2022年7月号「論談」に“管理会社が「管理者」をしてよいか”を掲載した。
 今回、多少手を加え再掲する。それは、管理会社による管理者を認めるような国交省のガイドライン等が出たために、再度、管理組合に注意喚起を促すためだ。
 管理会社が管理組合理事長に代わって管理組合のトップである「管理者」に就任するケースが増えているという。
 委託する者と受託する者が同一になるわけだ。こんなことで管理組合の財産や運営が大丈夫だろうか。
◆第三者管理の推進
 これまでのリゾートマンションや投資型のワンルームマンションでは管理会社が管理者となるケースは普通にあった。
 居住する区分所有者がほとんどいないこれらのマンションでは、実情にも合ったものであり、法律的にも特に問題はない。
 しかし、最近では、「組合役員の義務を意識」を強調するG社をはじめ、大手管理会社のいくつかが、「高齢化での役員のなり手不足対策」などを口実に、普通のファミリーマンションを対象に、理事会を廃止して管理者に管理のすべてを委任する「第三者管理」方式を意識的に推進しはじめた。

◆典型的な双方代理
 たしかに管理会社が管理者になることは法律に違反していない。
 しかし、これまで理事会(理事長)の指示(委託)を受けて仕事を行ってきた管理会社が、理事長に代わって管理者に就任するということは、利害の異なる双方の立場を代表する入りに座ることになる。
 管理会社にとって、都合のいい管運営が何の制約もな く可能になる、まことに「おいしい」業務である。
 双方代理の問題点は、大規模修繕工事などを管理会社の思いのままにすること。現状でも管理会社が元請けになっている場合が多く、利益相反取引が疑われる。
 これによって通常の費用に余分な費用がオンされる。
 管理会社が管理者になりたがるのは、修繕積立金や管理費目当てとも言え、決して管理組合の主体性や自立化への取り組み支援をするわけではない。
◆福管連の支援活動
 福岡マンション管理組合連合会(福管連)は、「理事長派遣」という事業を行っている。
 一見すると管理者派遣のように思えるかもしれないが、まるで異なる。
 管理組合に対する自立支援、主体性尊重などを基本理念としており、管理会社の行っている独断専横的な管理者とは180度異なる。
 このような取り組みは、新築時の管理組合も含め、今後とも必要な活動であり、管理組合で組織している管理組合団体の得意技と言える。

双方代理で大規模修繕工事が管理会社の思いのままに…?

◆任せたら戻れない
 メリットとしてこれらの管理会社は、①身体的負担の軽減、②トラブル時の適正判断、③遠慮なく要求・指摘できる、などをあげている。
 しかし、これはおかしい。①では負担が軽減する代わりに権限が全くなくなる、②と③では、当事者同士の「話し合い」から第三者への「お願い」になり、本当に組合員のための解決ができるかは極めて疑問である。
 さらに重大なのは、いったんこの「管理会社=第三者管理者」のシステムに入ってしまうと、元の理事会体制に戻すことが、極めて困難だということである。
 区分所有法ではたしかに、組合員(および議決権)の5分の1以上賛成での総会を開く手続きを行って議決するというシステムはあるが、実際にこの制度はわずかしか使われていない。
 この制度の利用に取り組んでみればわかるが、関心の高い活発な活動をしている管理組合でさえ成立させるのはなかなか大変な事業である。
 いったん管理会社に管理者を任せたら元に戻るのが難しい、管理会社の利益優先で、勝手放題な運営になるのは必至である。
 もし導入の動きがあれば慎重にも慎重な検討をお願いしたい。
 事実、10年を経てやっと管理者を解任し、管理組合主導に戻ったという報告がある。
 マンション管理の主体は、区分所有者であり、管理組合である。自立管理が何よりも大切になる。そのことをしっかりと考え、判断したい。
(NPO日住協論説委員会)

 

 

 


大規模修繕工事新聞172月号(24-4)