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長寿命化の実現へー塗料の役割とは/ 3回 防水とは何か②

大切な資産(マンション)の価値の向上、長寿命化につなげるため、塗料に何ができるのか、どうすればよいのか―塗料という材料の観点から考える連載企画の3回目です。
 今回の「防水とは何か②」は、「建物が動いても、保護剤、塗膜が割れないこと」についての説明です。
 前号に続く「防水とは何か」の2つ目は、建物が動いても保護する役目を担い、塗膜の割れを防ぐ特徴です。
 塗膜が硬い場合、コンクリートにひび割れが生じると一緒に塗膜も割れてしまい、ひび割れから水や水分、大気中の酸素や二酸化炭素などの劣化要因が浸入しやすくなります。
 反対に、塗膜が柔らかく伸びる性能がある場合は、コンクリートにひび割れが生じても塗膜が伸びて、コンクリートのひび割れが表面化することから守ります。
 外壁の下塗り材はいくつもあります。普及品である微弾性下地調整材、高付加価値品としての弾性力の強い製品とあります。
 写真①は、実際に微弾性下地調整材普及品で仕上げたバルコニーの見附部分で、構造的にひび割れが生じやすい部分です。
 改修工事後十数年経った時点で、同じ部分を調査したところ、見附部分にひび割れが発生していました。
 写真②は、①と同じマンションで、同じ見附部分の写真です。
 平滑な部分ではひび割れが生じていましたが、下塗り塗膜を厚く塗った垂直部分は、高付加価値品である塗材を使用したところ、塗膜が伸びることでひび割れの表面化が抑制される効果が出ていました。
 垂直部分では平滑部分から連続して、塗膜の下のコンクリート躯体にひび割れが生じているはずですが、塗膜の性能によってひび割れが表面化せずに済んでいるといった状況です。
 高付加価値品の下塗り材を検討することで、ひび割れへの追従という防水機能が発揮され、新しい価値をマンションに生み出すことができると考られます。
 普及品の微弾性下地調整材から高付加価値品に材料のグレードをアップすることで、現在の状態から、ひび割れへの追従という高付加価値をマンションにもたらすことができ、ひいては長寿命化につながると言えます。
<次号は「防水とは何か④《上塗》編」を予定>

大規模修繕工事新聞 2024年7月 175号