本気で「終の棲家」を目指すなら、マンション価値を向上させるとともに、快適性を求めることが重要です。
今回は給排水設備改修にスポットをあて、10大相談内容の10位から6位までを発表します。
詳しくはVimeoによる第72回管理組合オンラインセミナーの動画配信を視聴してください。全建センターのホームページから閲覧することができます。
◆相談内容No.10 排水管の清掃は毎年やるべきなの?
マンションの場合、様々なライフスタイルの方が居住しているし、生活様式が違う外国の方も増えてきているので、定期的な排水管清掃が望まれます。
写真は、築28年の千葉県のマンションの排水管です。大手の管理会社さんに管理を委託していて、毎年排水管洗浄をやっていたのですが、不具合があるといって私たちが調査に入ると、このように管の半分ぐらいがグリースで埋まっている状態でした。
給排水衛生設備維持管理の手引きを手がける一般社団法人日本建築設備診断機構では、立て管と枝管は別々に清掃してください、としていますが、写真のマンションでは、排水管洗浄はお部屋の中から立て管まで入れてやっていたようです。
そもそもマンションの専有部の枝管と、立て管の口径は全然太さが違います。
細い枝管から入れてきて、太い立て管を清掃するっていうのは能力が足りてない状態で清掃してるということで、毎年やってるのに清掃しきれてないというのが実態です。
屋上の立て管の一番上にはスライド式で、蓋が開いて、ここから清掃できるように作られている排水金物もあります。本当はこういう作り方をして、枝管と立て管を別々にして、きちっと清掃をしていくのがいいんじゃないのかなと思います。
相談内容No.9 給水方式の変更って?
近年の給水設備改修工事では、配管改修と共に給水方式の変更を同時に行うことがほとんどです。
受水槽から屋上にある高置水槽に上げて、そこから重力で各住戸に落ちる給水方式をやめて、水道本管から直接各住戸に供給する方式にするケース多いです。
受水槽も高置水槽も廃止するとなると、増圧ポンプを使うわけですが、水道本管の水圧を利用するので、省エネにもなるし、こうした増圧直結方式が今非常に多く取り入れられている方法になっています。
貯水槽がある場合と増圧直結給水方式に切り替えた場合のメリット・デメリットを表にしました。
増圧直結給水方式でタンクをなくした場合には、例えば水槽の跡地を駐車場にする事例もあります。停電になっても水は供給されるし、電気料金の削減も可能になります。ため水としないので、フレッシュな水が利用できるという点もメリットです。
ただし、給水方式変えるときは、管理組合によく言うんですけど、水槽にため水があるというのもやっぱり震災時にはかなり大きなメリットではあるので、そこを十分ご検討されて決められた方がいいんじゃないかな、と思っています。
相談内容No.8 配管の耐用年数を教えてほしい
一般的な指標ではありますが、メーカーなりが想定してる耐用年数は一般的な指標であり、実際は定期的な点検や診断によって判断していく必要があります。
管と管をつなぐ継手の接合工法によるけれども、塩ビライニング鋼管は25年から30年くらいで取り替えるというケースが多い。期待耐用年数はだいたい40年以上ですが、耐用年数は基本的には一つの目安で、実際どう取り替えていくかというのはやっぱりきちっとした診断が必要です。
排水管は築35年から40年くらいです。今ストックマンションが高経年化してきて、35年40年ものが非常に増えている状態です。 昔は鋼管といわれる金属配管が使われていたんですけど、今は樹脂系に進化して、錆びない、腐食しない、穴開かない、そんなような配管が使われるというような時代になっています。
先ほどの排水管の清掃を毎年やる理由として、配管の劣化を見つける目安にもなりそうです。
専有部の洗濯機の下にある排水管につなぎとめるために使っていたフレキシブル管をネズミが食いちぎっていく。そういう事例が、東京でも千葉でもどこでもあります。
また、ねじ接合は職人さんの技量によって大きな差がでないように、最近では機械的接合が多い。ただし、ネジっていうのは山谷、山谷で切っていくので、どうしても谷の部分の肉厚がめちゃめちゃ薄くなってしまう。1階床下ピット内での硬質ポリ塩化ビニル管の割れについては、床下に点検・調査入るわけですけど、そうすると知らない間にジャンジャン漏れている、こんなようなことが起きてしまう。だから定期的な点検がどうしても必要なんじゃないかなと思いますね。
相談内容No.7 排水通気管の改修は必要?
排水管の更新工事が終わっているのに排水通気管だけが取り残されてしまっている事例が多くあります。通気管(空気が流れる配管)であっても老朽化により不具合が起きますので、改修が必要です。
神奈川県の築41年マンションの事例です。調査にお伺いしたら、室内に排水立て管があり、天井のクロスが剥がれていて。天井を開口して石膏ボードを破ってみると、カビが全面に発生しているという状態でした。
これ何が原因かっていうと、排水通気管に穴が開いてたんです。
お風呂の温かく湿った排水が流れることによって、湿った空気が充満する。経年によって腐食していって、穴が開いてしまうのです。
このため、穴が開いているところを直して、壁を全部壊して、カビの防止の処理をして消毒して修理します。こういう不具合が起きるので、排水管と一緒に改修しなければいけないということです。
相談内容No.6 工事中はトイレが使えない。みんなどうしてる?
近年の給排水管改修工事現場の多くは「排水管改修工事」が行われています。このとき、問題となるのが、「工事中にトイレが使えない」問題です。
近年の排水管改修工事は、管を取り替えることが多いので、工事中にトイレは使えないという問題が起きます。
工事期間は1部屋4日間。1日目に工事箇所の内装を壊して開口し、2日目に配管を取り替え、3、4日目で内装を戻します。作業は9時から5時。作業時間以外は使えるようになりますが、日中は4日間使えないことになります。
こうなると、日中にトイレ行きたいと思ったら、玄関開けて廊下を歩いてエレベーターを降りて、居住者用の仮設トイレや集会室のトイレを使ってくださいとなるんですけど、トイレの仮設って結構抵抗ありますよね。
お部屋から出られない場合は災害用の非常用簡易トイレを使って、なかなかトイレに行きたいときに行けない方はこれで対応してもらう。最近は高齢な方が増えてきたんで、9時から5時の間だけ4日間、デイサービスに行ってもらうとか、そのような対応をしていただいています。
<次号ではNo.5からNo.1を掲載します>

給排水設備改修相談室長
全建センター筆頭理事:木村 章一
・一級管工事施工管理技士
・一級建築施工管理技士

