
賃貸増加で人の出入りや騒音が問題化静かに穏やかに過ごしたいのに…
住宅専用のマンションですが、高経年化するとともに、賃貸に出す住戸が増えてきました。
そうすると、何の営業をしているかもわからない住戸も出てきて、不特定の人の出入りや騒音が問題化しています。
わたしたちは従来どおり、静かに穏やかにマンションで過ごしたいと思っています。大きな問題になる前に、賃借人に対する規制を設けたり、著しい違反がある場合は賃貸人である区分所有者に責任を問うことはできるでしょうか。
悪質業者が性風俗店に利用した事件も発生、トラブル回避には賃借人含めた情報管理を
近年、転勤や家庭の事情のほか、投資目的の購入等、様々な理由から分譲マンションを賃貸に出すケースが増えています。
賃貸物件を探している人にとっては選択の幅が増える良い機会となっていますが、従来から居住している人にとっては、住民同士の交流が希薄化し、長期的コミュニティ形成が難しくなるなどというデメリットが考えられます。
最近起こった事件として、悪質な仲介業者が性風俗店として利用されることを知りながら、居住用マンションの賃貸借契約を仲介したとして詐欺罪の容疑で逮捕されたという事件があります。
物件のオーナーは定職があり、居住として使う人を条件として貸し出していましたが、仲介業者と借主が共謀して証明書等を偽造し、犯行に及んだという事件です。入居者をチェックできないと自分の住んでいるマンションがどのように利用されるか分からないというリスクが如実になった事件です。
このような状態を避けるため、マンションの管理組合においては、賃借人を含めた居住者に関する情報を管理すべく、居住者名簿を作成しておくべきです。
標準管理規約64条には、「理事長は、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類を作成して保管し、…」と規定されておりますが、この組合員名簿とは別に賃借人を含めた居住者の氏名、連絡先、緊急連絡先などを記載した名簿を作成することを規約や細則で別途定めるべきでしょう。
このような居住者名簿の作成と運用は、住民の安全と快適な生活を維持するために不可欠です。管理組合は、名簿の整備を通じて、住民間のコミュニケーションを促進し、トラブルを未然に防ぐ役割を果たすべきです。
ところで、賃借人が近隣に対して迷惑行為を行っている時に、その部屋の賃貸人である区分所有者は何らかの責任を負うのでしょうか。
この点、賃貸人である区分所有者が是正措置をとりさえすれば違法な使用状態が除去されるのにも関わらず、賃貸人が敢えて何らの措置も取らずに放置した結果、住民に損害が発生した場合には、賃借人の違法な使用状況を放置したことが不法行為となると判断した裁判例があります。
このように、賃借人の迷惑行為により、その賃貸人である区分所有者も責任を負う場合がありますので、部屋を賃貸に出す区分所有者は賃借人が他の居住者に迷惑をかけるような状況を発見した場合は、直ちに是正措置を講じるべきです。
大規模修繕工事新聞182号(2025-02)