本気で「終の棲家」を目指すなら、マンション価値を向上させるとともに、快適性を求めることが重要です。
今回は給排水設備改修にスポットをあて、10大相談内容の5位から16位までを発表します。
詳しくはVimeo、YouTubeによる第72回管理組合オンラインセミナーの動画配信を視聴してください。全建センターのホームページから閲覧することができます。
◆相談内容No.5 入室工事○日間ってほんと?
近年、活発に改修工事が行われている専有部分への入室作業のある排水管改修工事、専有部給水給湯管更新工事では、その工事内容によって長い入室工事が必要となる場合があります。
例えば「1部屋6日間の工事になります」という話をすると、「6日間もトイレが使えない。洗濯もできない。そんな長い期間の入室工事はできない」と言われることがあります。
しかし、実際はやらないと、漏水が起こっていれば、被害がどんどん広がっていくため、やるとなったら、こういう工程でもやらざるをえません。
事例①のマンションは12階建てだったので、縦列で3フロア分割して工事をしました。予備日を含めなければ1住戸5日間かかるという工程です。
排水管の取り替えをやるということは、下の階から上の階に進んでいくので、上層階の住戸は自分の住戸を含め、さらに下層階の工程も含めた排水制限が必要になります。
基本的にお部屋の中に入る工事というのは、全体説明会、工事説明会と違って、1戸1戸のお客様に説明して、理解してもらって納得いただくっていう方法しかないわけです。
1戸でも理解が得られなければ工事はできません。1件1件きちっと説明してご理解していただくことがとても重要であるところを管理組合さんにも理解していただきたいと思います。
相談内容No.4 専有部給水給湯管の更新工事ってみんなやってるの?
当センターにご相談いただく管理組合様は、半数以上が専有部工事を実施しています。
私ども全建センターで2021年に行ったマンション給排水管に関する実態調査によりますと、最近ご相談いただく管理組合さんの中で専有部分の給水・排水管の改修工事の実施比率をまとめたところ、最終的には、給水管についても、排水管についても半数以上のマンションで、「実施した」という実態になっています。
管理組合が主導して専有部分を実施する時は、必ず規約の改正、工事の計画、合意の形成まで含めてコンサルティングする必要が生じます。
専有部分を各戸任せにしているとバラバラになりやすい。やっぱり各戸均一な品質で、マンション全体が更新・向上するためには管理組合として取り組むのが一番いいと思うし、結局は皆さんのマンションなので、皆さんの合意のもと、規約を変えて、皆さんのご負担をなるべく少なくして、住みやすいマンションにしていく。そのお手伝いをすることが非常に多くなっています。
相談内容No.3 給排水管の劣化診断、どうすればいい?
給排水管の劣化診断の結果によって改修計画を進めますが、管理会社のサービスの域で行われる劣化診断で判断することは、注意が必要です。工事実施のための手段としての劣化診断ではなく、長期修繕計画的に見れる劣化診断が必要です。
マンションは、長期修繕計画を作って、きちんと維持していくことが大事です。そのための劣化診断は、直接改修工事に結びつけるためのものではなく、いつどのようにやって、どのように管理組合として運営していくかというためのものです。このため、管理会社のサービスの域でカメラで見て悪いところだけ抜き取って、それで全体の工事に移行していくという改修計画はあまり良くないのではないかと思います。
合理的な設備修繕を行うためには、1.問診、2.劣化箇所の予測、3.劣化箇所の診断を行います。
今後の維持管理まで説明して、きちっと皆さんとともに共有していくことを当センターの劣化診断としてお勧めしています。
相談内容No.2 更新工事と更生工事、どちらがよいの?
工事の手法を選択するにあたっては、既存配管システム(配管と継手の種類)、現状の不具合内容(勾配不良、排水不良、耐震性不足など)、どちらの工法が当マンションに適しているかなどを考慮して選択することが必要です。
給水管更新工事は、お部屋の床や壁を開ける、地面を掘る、こんなことをしながら取り替えていく。だから工事日数もかかるしお金もかかります。
一方、更生工事は内装を傷めず、いじらずに、配管の中の錆、腐食箇所をクリーニングし、エポキシ樹脂を塗布・コーティングするものです。コストは、やはり更生工事の方が安い。これは、イニシャルコストは安いということです。
経年が若い段階で更生工事を行ったとしても、いずれは更新工事が必要になります。更生工事はあくまでも延命工法の一つなので、例えば、更新工事のコストが100だとして、更生工事が70だとしても、更新工事が100で終わるのに対し、更生工事を2回行うと140になってしまいます。
最近は排水管を取り替えるのか、更生するのかと相談をよく受けます。
排水管は、勾配が悪い、管径の太さが適切ではない、こうしたものは更生工事では直りません。近年では排水にも耐震性を求められることがありますが、耐震性の改修もできません。
また、最新の超節水型トイレなど、既存の排水管では処理できない場合もあり、現在の住宅設備や生活様式に合わせるには、やはり根本的な更新工事が必要だと思います。
相談内容No.1 給排水設備改修は、終の棲家にするためなぜ必要なの?
給排水管からの漏水事故は、自身の日常生活が突然ストップするだけではなく、下階住戸などへも被害を与えてしまい、それまで良好だったコミュニティまでもが壊れる場合がありますので、予防保全・適切な修繕が望まれます!
給排水管の老朽化による漏水問題は、生命・身体・財産に影響すると言われてます。給排水管が健全でないと、皆さんの生活がいきなりピタッとストップしてしまいます。
給排水については、皆さんの日常生活に密着しているものですから、予防保全できちんと直していかないと、終の棲家なんかには到底なり得ないと思います。
また、漏水事故は下階住戸などへの被害も与えてしまい、それまで良好だったコミュニティまでもが壊れる場合があります。
高経年マンションがさらに増え、空き家率もどんどん進行していく中で、管理不全にならないように対策を取っていくことが必要です。
それとこれまで見ていただいた通り、築40年以上の高経年マンションでは漏水問題を抱えています。給排水管改修問題に取り組んでいきましょう。
そして、区分所有者の永住意識がすごく高まっているんですけど、日本の人口がどんどん減少していく中で、外国人区分所有者が増えていくことを想定していくということも、終の棲家にしていくためのポイントとしてあると思います。
● 今後、高経年マンションにおいては、さらに空き家率が進行していくものと考えられる。 ⇒ 空き家が増えて管理不全にならないように対策をとっていきましょう!
● 築40年以上の高経年マンションでは、「漏水問題」を抱えているものが多い。 ⇒ 本日お話させていただいた給排水管改修問題に取り組みましょう!
● 区分所有者の永住意識は高まっているものの、日本の人口は減少していく。 ⇒ 外国人区分所有者が増えていくことを想定しておきましょう!
大規模修繕工事新聞 2025-03-183号

給排水設備改修相談室長
全建センター筆頭理事:木村 章一
・一級管工事施工管理技士
・一級建築施工管理技士