
今年1月下旬に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故は、私たちに都市施設の老朽化という問題に正面から向き合うことを求めるものとなった。
同様にマンションの居住者にとっても、建物や設備の老朽化対策と維持管理が重要な課題となっている。
特に2つの老いが進む中で、地震災害を含む災害時対応の問題がより深刻である。
その中で、最も切実な課題の一つであるトイレ対応を見てみたい。
◆地震時のトイレ逆流
大地震が発生すると、建物の揺れによって排水設備が排水立管や横引管の破損で、上階からの汚水が下階で逆流し、トイレや浴室から汚水が溢れることが起こる。
また、下水道の詰まりや損傷が発生すると、正常な排水ができずにマンション内の排水が滞留し、各戸のトイレや排水口から逆流することになる。
特に停電時には、排水ポンプの機能が停止するので、排水の流れが悪化し逆流のリスクが高まる。
◆事前準備が必要
管理組合は、給排水設備の図面を確認し、各住戸の排水経路や点検必要個所を把握、排水設備の定期点検を実施し、老朽化が進んでいる場合は補修・改修を行うことが求められる。
管理組合として、非常用の携帯トイレや簡易トイレを備蓄することが必要である。最近ではかなり使いよい製品も出ており、十分に備えたい。
また各家庭でも可能なかぎり備蓄するよう勧めることも望ましい。一般的には「1人当たり最低3日分が目安」とも言われているが、食料品と違って支援があまり期待できないので、できるだけ多く確保する方がよい。
あらかじめの対応として、災害直後から「トイレをすぐに使用しない」ことの重要性を徹底しておくことが必要である。
管理組合が主導して、便器の破損や漏水の有無を確認し、迅速に業者と連携し、排水設備の点検・復旧を進める。
◆マニュアル作成と周知
災害時におけるトイレ対応は、マンション住民にとってすぐ直面する死活的な問題である。
管理組合は、自治会などと協力し、防災委員会をつくるとともに、事前の備えとしてトイレ使用マニュアルを作成し、居住者全員に周知することが求められる。
適切な対応を行うことで、被害を最小限に抑え、安全・安心な生活を維持することが可能となる。
すべての住民が協力しあって、防災訓練も繰り返し行い、日頃から防災意識を高めておくことが肝要である。
(NPO日住協論説委員会)
大規模修繕工事新聞185号(25-5)