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第75回管理組合オンライン・セミナー採録・第1部『AI認定コンサルの役割』

一般社団法人全国建物調査診断センターが主催する管理組合オンライン・セミナーを採録します。
第75回は全建センターの提供サービス『マンションAI』をメインテーマに、第1部では『AI認定コンサルの役割』について、全建センター・佐藤成幸筆頭理事が説明を行いました。
視聴動画は下記URLよりVimeoとYouTubeで公開しています。
//zenken-center.com/75sm

<第1部の要約>
○テーマ:『AI認定コンサルの役割』
○講師:佐藤成幸・全建センター筆頭理事
(マンション管理士、一級建築施工管理技士)

全建センターの『マンションAI』とはどういうものなのか。使用方法について解説していきたいと思います。まずは使ってみてください。
全建センターのホームページ『全建library』にアクセスをしていただきます。『マンションAI』と書かれたバナーがあります。ここをクリックすると、AIのチャットのページが開きます。
ページの下側に「どのようなお困りごとがありますか」とAIから尋ねられますので、ここに悩みや問題点を文字入力します。すると、数十秒後に、AIからの解答が返ってくるということになります。

1.大規模修繕工事とマンションAI
試しに、「大規模修繕工事を談合させずに正しく進める方法は?」と入れてみました。
そうすると、以下のような解答が得られました。
「大規模修繕工事を談合せずに正しく進めるためには以下の手順やポイントを押さえることが重要です」

さらに、具体的な進め方が一つひとつ出てきます。
1 調査診断による現状把握
2 コンサルタントの選定
3 施工会社の選定
4 総会で承認
5 工事契約の締結
6 工事進捗の管理
7 工事竣工と引き渡し
8 アフターサービスと瑕疵対応
調査診断については、その目的、方法、注意点といった話が出てきます。コンサルタントの選定も目的、選定基準、セカンドオピニオンに関する説明が行われます。
施工会社の選定では、「公募や入札方式を採用して透明性を確保する」「会社規模や実績、技術力などを総合的に評価する」「特定の会社に偏らないよう複数の候補から慎重に選ぶ」などといった方法、選定基準、注意点が具体的に書かれています。
さらに、4総会での承認、5工事契約、6工事進捗等についての管理・・・8アフターサービスなど、一連の流れが言及されて出てきます。
最初に「大規模修繕工事を談合させずに正しく進める方法は?」と一言聞いただけで、一連の流れとして『マンションAI』は教えてくれるという機能が定まっているのです。
ところで、『マンションAI』の解答はこれで分かったんだけど、さて、自分のマンションに置き換えた場合、具体的に何をしたらいいのか?という声も多数寄せられています。

【声の例】
1.調査診断による現状把握:調査診断を行う会社はどうしたら見つかるのか?
2.コンサルタントの選定:信頼できるコンサルタントはどうしたら見つかるのか?
3.セカンドオピニオンの活用をしたいが、どうしたら見つかるのか?
4.施工会社の選定基準が必要なことは分かったが、自分のマンション規模での正しい基準はどのくらいか?
5.見積の比較分析が必要なことは分かったが、そもそも何と何を比較したらよいのか、比較して正しいのか間違いなのかわからない
6.総会で質問攻めにあったらどうしたら良いのか、つるし上げや糾弾されたらどうしたらよいのか?
7.マンションAIの言うとおりに進めて問題が発生したときには、AIは責任を取ってくれるのか?

これらの声は、管理組合のパートナーとしてプロのコンサルタントがいたら、全部解決していた問題なんです。
ところが、今のこの時代、普通のコンサルタントはなかなか信用できない時代です。
『マンションAI』を利用しながら、本当に真に信用できるコンサルタントはどこにいるでしょうか。

2.真のプロコンサルタントの力とは

私どもでもいろいろ考えさせていただいた中で、一つのご提案をご用意しました。
『マンションAI』が導き出した真の「プ口中のプロのコンサルタント会社」を紹介させていただこうということです。
『マンションAI』が出した解答に沿って、そのマンションにフィッティングするように翻訳、助言してくれる真のプロのコンサルタントを紹介してはどうかという仕組み、スキームを考案しました。
どういうことかというと、今の時代、施工会社の談合報道を受けて様々な情報が飛び交っています。インターネットで調べでも、口コミも含めて、実際のところは真偽不明の情報です。
しかし、あたかもそれが真実かのように信じ込んでしまうというバイアスがかかってしまう現実があります。真偽不明の情報にかき乱される典型的な例に陥っている方も多く、果ては「施工会社は、コンサルタントは悪だ」と決めつけたりするような状態になっています。利益誘導も含めて、業界で問題が起こっていることは事実です。
ただ、こうした混乱に乗じて、「自らこそが正義です」という自称で名乗るコンサルタントが登場してきたり、「うちは談合してませんよ」と言って、自ら正義を名乗る業者も出てきたり。果ては、管理組合を乗っ取る「なりすまし」理事も出てきているという事態になってきています。
情報がありすぎて振り回されている管理組合の姿がここから見えてきます。真に正しいことは何なのかということの見極めができないのだと推察されます。
談合問題については、公正取引委員会をはじめ当事者しか知らないはずなのに、デマや憶測、混乱に乗じたエセ営業、誹謗中傷など、本質的な真実にはほど遠いということに皆さん方踊らされているだけです。
今管理組合がすべきことは、冷静に落ち着いて、当局からの真実の公表を待つこと。こうしたものが実は今一番必要なんです。
3.トータルマネジメント方式と真のプロコンサルタント
私どもがご紹介させていただくプロ中のプロのコンサルタントは、こうしたデマや余計な情報に振り回されないよう、管理組合に冷静さを促すものです。
では、具体的にどういった方式において、このプロのコンサルタントが生かされることができるのでしょうか。

これまで、全建センターでは、管理組合の有益になるような仕組み、情報、大規模修繕工事への取り組み方スキームを提案してきましたが、その一つである「トータルマネジメント方式」。これが真のプロコンサルタントと非常にシナジー効果が高いのではないかと考えられます。
「トータルマネジメント方式」は、一般的な大規模修繕工事の際に設計事務所が主体となって実施する「建物調査」→「改修設計」→「施工者選定」→「工事監理」の行為を主体者としての立場では実施せずに、同等の行為を施工者に全て実施させる方法です。
そして、プロジェクト全般を管理することで、より管理組合の利益保護を図ろう、という考え方に立ちます。
真ん中に管理組合を置き、施工会社をトータルマネジメント方式ではパートナー施工会社と呼び、1ランク上の信頼性を求めることになりますけれども、そこに対してプロジェクトマネジャーを配置することにより、まして管理組合のプロジェクトの進捗を図っていくと、このようなやり方になります。

 

このプロジェクトマネジャーというのが、AIが導き出した様々な進め方に対して、管理組合にメリットを増大させる真のプロのコンサルタントとなります。
プロ中のプロのコンサルタントを配置することによって、トータルマネジメント方式をスムーズに進めることができるのです。
トータルマネジメント方式の概要は、過去、何度も説明していますので、全建libraryにおけるセミナーのアーカイブ等で検索してください。
簡単に言いますと、工事の発注方式において、プロジェクトマネジャーを配置することで、パートナー施工会社等から提出される調査診断や工事範囲と仕様・工法の提案、工事見積書等を、プロジェクトマネジャーが管理組合の目となってチェックする仕組みです。
多くの管理組合では昨今、工事予算が非常に厳しく限られているというのが現状です。その限られた予算の中で、いかに必要な工事をより良くやるか。これはやはり、施工会社の目線ではなく、管理組合の目線に立ったプロが「省くものは省く、いらないものは除外する」「予算を割くべきところは割いて良い工事をする」といった、メリハリを効かせた提案する。ここが実にプロジェクトマネジャーの腕の見せ所となりまして、真のプロフェッショナル中のプロのコンサルタントであればこそ、管理組合側に立った仕分けができると、このように考えています。
工事の実施に関しては、パートナー施工会社の管理体制が合理的にできているかというところをチェックしていきます。
これも簡単に言うと、施工会社本位の経済的合理性に基づいた検査体制と、管理組合が求めたい品質に到達するための施工会社の検査体制というのは異なります。
このため、管理組合がこれだけの品質が欲しいと言っているので、施工会社はこの品質に到達する検査をしなさい、とプロジェクトマネジャーが指示、指導するわけです。
その他、プロジェクトマネジャーの役割として、全体的な予算管理とスケジュール管理が非常に重要なところになります。

①予算管理
・パートナー施工会社による建物調査診断から工事施工までに関わる総額の工事予算に関して、合理的かつ妥当な上限を設定しその枠を有効に使用できるように全体を通して予算書を作成して机上で管理を行う。

②スケジュール管理
・初期作業のパートナー施工会社選定作業から工事完了までのマスタースケジュールを作成し管理運営する。
・パートナー施工会社選定段階、調査診断段階、改修設計検討段階、工事実施段階の各段階のスケジュールを組み立て管理運営する。

繰り返しになりますが、トータルマネジメント方式と『マンションAI』が導き出したプロのコンサルタントというのは、非常に相性が良く、シナジー効果が高いということで、管理組合の検討のスキームの選択肢の一つとして、提案させていただきます。
『マンションAI』はやはり、これからの時代としては欠かすことのできないものと考えられます。
ただし、このAIが導き出した正解と、そして管理組合の実情をつなぐ通訳や翻訳者は必要です。それこそが、全建センターが紹介できるプロ中のプロコンサルタントである、と認識しています。
このため、当面は『マンションAI』とプロ中のプロコンサルタントはセットでお考えいただくことにより、管理組合のメリットが増大するという認識を持っていただけるのではなかろうかと思います。

そのような認識の下、まずは皆さん、ぜひ全建libraryの『マンションAI』をクリックしていただいて、素朴な疑問も含め、マンションのお悩みを聞いていただき、出てきた答えに合わせて、プロ中のプロコンサルタントの使用が必要かどうか、こうした段階までこれを機会にご検討いただければ、と考えております。

大規模修繕工事新聞 2025-7月 187号