管理組合役員勉強会
「大規模修繕工事事例特集」その1
3 / 23 東京・京橋 住宅あんしん保証本社会議室にて
全国建物調査診断センターと建物修繕技術協会は3月23日㈰午後1時30分から、東京・京橋で管理組合役員勉強会「役員さん、大規模修繕工事の備えは十分ですか?」を開きました。この勉強会は3カ月に1度のペースも参加者から好評を博しており、毎回満席の状況です。
今回、第1部を「大規模修繕工事事例特集」、第2部を「給排水設備改修事例特集」題して講演を行いました。
ここでは第1部の「大規模修繕工事事例特集~本当にあった工事の怖い話、嬉しい話、他~」について、講師の㈱リノシスコーポレーション(1級建築士事務所)佐藤成幸常務取締役の講演を紙上採録します。
本当にあった工事の怖い話①
1.消えた現場代理人
物件概要:RC 5階建て・1棟・56戸・工期:4カ月間経過
問題の現場代理人(施工会社)は常勤契約で工事管理を請け負っていた。工事監理者が週1、2回検査チェックを行うため、その現場代理人とは、その都度顔を合わせて打ち合わせをしていた。夜間には現場代理人からの工事日報が監理者に送付されており、毎朝の朝礼、夕方の点呼、翌日の指示事項等の記載内容のチェックも毎日している。
ところが、「常勤の現場代理人が昼間いない」という情報が入ってきた。
監理者が抜き打ちで現場に行くと、確かに現場代理人が消えていた!
携帯電話に連絡すると、
「足場に上がっています」という。
「すぐ降りてきて」と言ってもなかなか下りてこない。時間経過後にまだ降りて来ない再度電話をすると「本社から緊急の呼び出しがあって、足場降りてからそのまま本社に帰りました」…本当はどこに消えてしまったのか!?
その後…
監理者はただちに施工会社の上席を呼び出して事情を確認した。
そこで、現場代理人は毎朝、朝礼後に現場を抜けて別の現場に赴き、日中はそこで現場指示をし、夕方に戻り点呼して日報の作成をしていたという実態が判明した。
常勤という本契約に違反しているだけでなく、法令違反の可能性もあったため、監理者は後日国土交通省担当局に報告した。
2.アフター点検手直しが終わらない
物件概要: RC 2階建て・2棟・40戸(斜面地共同住宅)・工期:5カ月間経過
経過
大規模修繕工事を行う際、管理会社を施工会社として選定した。
ただ、実際は施工時点より、現場代理人をはじめ、すべて丸投げ工事であった。それどころか設計図書内事項の仕様を変更して追加費用までとっていた。
アフターサービスの1年点検をしたところ、ルーフバルコニーより漏水が発生している個所が見つかった。
ところが、管理会社曰く「うちは設計図書通りに工事をしたので工事範囲外からの漏水は責任外です」という。管理組合が「工事範囲外と証明されたの?」と聞き返すと、
「それはそちらで瑕疵だと判断して指摘してください」と回答する。「反対でしょ。貴社で調べて結果が違うなら有償と言えばいいんじゃないのですか?」。
しかし、管理会社は譲らない。「調べるのは組合様のほうで」「営業段階では管理もしているから工事後に不具合があっても安心だと言っていた」「管理と工事は別部署です」「…」。
その後…
結局、管理会社はしぶしぶ調査を行ったが、「工事範囲外は関係ない」「工事範囲は決めていない」などやりたくないモードが全開で対応していた。管理会社を変更するといえば、「それなら工事の件で呼ばれても行かない」と居直る始末。
1年点検の手直しでこのありさま。時間を費やしている間に何と2年点検の時期を経過してしまった。
なぜそこまで何も対応しないのか。どうやら丸投げ先の工事会社が動かないからというのが理由のようで、今年で5年目になるがいまだに同じ状態のままである。
(大規模修繕工事新聞 2014-4.5 No.52)