私たちは、自分に関係のないことには驚くほど無関心でいられます。
火の粉が自分に降りかからない限り、対岸の火事を眺めて「大変だなぁ」と呟くだけ。
しかし、「老い」に関しては、ある日突然、鏡の中の自分、足元の段差、あるいは住み慣れた我が家の壁にその影を見つけ、動揺することになります。
「老い」や「死」は、考えたくないものの筆頭です。しかし、直視を避けてきたその場所にこそ、私たちが向き合うべき本質が隠されています。
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マンションという共同体には、いま3つの「老い」が同時に押し寄せています。これらは単独で起きるのではなく、互いに絡み合い、負のスパイラルを生み出します。
■建物の老い(物理的劣化)
配管の錆やコンクリートの剥離。目に見える老化は、修繕積立金の不足という「経済的な病」を引き起こします。
ただ、管理組合が意思を持って、長期修繕計画をしっかり組み立てていれば、建物自体は100年持たせることは可能だと言われています。
『3つの老い』の中で対処しやすいものです。
■人の老い(住民の高齢化)
住民が年を重ねれば、管理組合の理事を担う担い手が消えます。
理事のなり手がいないからと言って、管理業者管理方式に移行すれば、意思決定の場が他人任せになり、管理業者、工事業者、点検業者がいいように管理組合の資金を使えるようになります。そして組合資金がなくなれば(修繕積立金不足)、捨てられるだけです。
「建物の老い」と異なり、所有する人々の意思の無さがあだとなって、最後には捨てられ、スラム化していくことになります。
負のスパイラルの典型例だといえます。
■ルールの老い(陳腐化)
標準管理規約に準拠していない管理規約は、防災・緊急時の対応、ITを取り入れた合理化といった現代のニーズに遅れたままでいます。
今般、区分所有法の大改正があり、それに伴い、各マンションの管理規約の見直しも迫られています。
このときにやらなくて、いつやるの?
だれかがやってくれるの?
マンションの所有者として住んでいる人々の「意思」です。それがなければ、スラム化していくだけです。
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「自分はまだ若いから」「このマンションは大丈夫だから」という無関心は、思考の停止に過ぎません。そして社会的な孤立という「社会的な死」は、ある日突然、当事者として目の前に現れます。
これらの老いに抗い、あるいは共生するためには、計画的な修繕、マンション管理士などの専門家による第三者管理方式の導入、デジタル技術の活用といった「新しい武器」を持つことが不可欠です。
マンションの3つ老いを直視することは、特に高齢者の区分所有者にとっては、ご自分の人生の最後に、一番の損をしないようにするための、極めて前向きな「生」の問いです。
以下、あなたのマンションの「老い度」はいかがでしょうか。
□住民同士の挨拶が減り、隣に誰が住んでいるか(あるいは空室なのか)把握できていない
□独居高齢者が増え、安否確認や孤独死への不安が管理の話題にのぼるようになった
□総会に出席する人が少なく、委任状だけでギリギリ成立している状態である
感じるところが少なからずあれば、「社会的な死」やスラム化の予兆があります。専門家を交えた抜本的改革が必要です。
<全建センター・大規模修繕工事新聞論説委員会2026-3-02>
大規模修繕工事新聞 2026-12 193号





