管理費7.5%、修繕積立金16.5%上昇
公益財団法人東日本不動産流通機構の調べによると、2024年度に成約した首都圏中古マンションにおける管理費は、月額平均13,847円(2020年度比約7.5%上昇)で、修繕積立金は月額平均13,177円(同比約16.5%上昇)を記録しました。㎡当たり単価では、管理費216円(2020年度201円)、修繕積立金205円(同176円)となっています。
かつては「失われた30年」と言われ、低成長が続いていたため「一定」と思われていた維持費が、いまや明確なインフレの波に飲み込まれています。そして、家計への負担増がよりいっそう深刻な課題となっています。
「人手不足」と「資材高騰」
管理費を押し上げている最大の要因は、人手不足に伴う人件費の高騰です。管理員や清掃員の人手不足が深刻化しており、設備点検など下請け業者の賃上げ要求も手伝って、管理会社への委託費の高騰に直結しています。
さらに共用部分の電気代上昇や、災害リスク増大による火災保険料の改定も、管理費のコスト増に拍車をかけています。
一方、修繕積立金については、建築コストの急騰が直撃しています。建築費は2012年以降、建築費は右肩上がりで、2023年までの上昇率は30%を超えています。2020年頃からは特に建設資材が急騰しています。
また、分譲時の販売を容易にするために当初の修繕積立金の設定額を抑え、段階的に値上げする「段階増額積立方式」を採用しているマンションが多く、構造的に将来の値上げが避けられません。
保守的すぎる長期修繕計画
見落とされがちなのが、管理会社が作成する長期修繕計画の「中身」です。多くの計画は、安全性を最優先するあまり非常に保守的な設定になっています。
たとえば、耐用年数が15年の設備をあえて12年で交換するような計画です。
管理会社にとっては安全策ですが、管理組合にとってはコスト増につながります。「本当に今、その工事が必要なのか?」を精査するだけで、数百万円から数千万円単位の支出を抑えられる可能性があるのです。
値上げの波に呑まれないための対策
では、このインフレの波を乗り越えるには、どのような対策が必要でしょうか?
それには、ただ値上げを受け入れるのではなく、支出と計画を抜本的に見直す「経営者視点」の対策が不可欠です。
1.管理仕様の精査
点検や清掃の頻度が過剰ではないか、管理員の勤務時間が適切かを見直すことで、サービス品質を維持しつつコストを削る余地があります。
また、空き駐車場の外部貸し出しや、利用者の減った共用施設を収益施設へ転換するといった「稼ぐ」努力も一案です。
2.修繕周期の「超」長期化
修繕積立金については、「修繕周期の長期化」が鍵を握ります。
高耐久な資材を活用し、従来12年前後だった大規模修繕の間隔を15〜18年に延ばすことで、マンションの生涯コストを大幅に抑制できます。
管理会社が作成する計画は往々にして保守的であり、耐用年数に余裕がある設備まで早期交換が盛り込まれているケースも少なくありません。
3.第三者の「セカンドオピニオン」活用
「具体的な費用内訳」や「将来の収支見通し」を精査する場合、その妥当性を判断してもらうのは第三者の専門家です。
専門家の診断による「セカンドオピニオン」を活用することが、過剰な値上げを防ぐための最大の近道となります。
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マンションの資産価値を守るのは、管理会社でも国でもなく、住民自身の「関心」です。
マンション管理の質を落とさずにコストを最適化するための鍵は、住民一人ひとりの「関心」にあります。 一部の役員に任せきりにせず、多様な世代や性別の住民が管理に意見を言える環境を作ることが、健全な運営と資産価値の維持につながります。
「値上げは避けられない」と諦める前に、まずはご自分のマンションの管理仕様や長期修繕計画を確認し、専門家の知恵を借りながら、未来の収支を自分たちで話し合ってみましょう。
<全建センター・大規模修繕工事新聞論説委員会2026-4-02>
大規模修繕工事新聞 2026-12 193号





