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不在と思っていた住戸に人がいた!? 専有部分の立ち入り拒否禁止、排水管洗浄等作業の妨害禁止を命じる

令和6年11月27日東京地裁


【当事者】
原告:管理組合(権利能力なき社団)
被告:区分所有者(家庭裁判所により選任された不在者財産管理人=弁護士が付いている)

【主文】
1.被告は、原告または原告の指定する業者が専有部分内に立ち入り、キッチン、洗面所、風呂、トイレ、洗濯機置き場に設置されている排水管を点検、洗浄することを拒否してはならない。
2.被告は、原告または原告の指定する業者が作業できるようにせよ。
3.被告は、原告または原告の指定する業者の点検および洗浄作業を妨害してはならない。
4.被告は、原告に対し、弁護士費用として95万7000円(税込み)および遅延損害金を支払え。

【事案の概要】
本件は、被告専有部分において10年以上にわたり排水管洗浄のための立ち入り拒否が続き、階下への漏水事故も発生したことから、原告管理組合が管理規約に基づき、排水管の点検・洗浄の受忍と妨害禁止、および訴訟に要した弁護士費用の支払いを被告に求めた事案。


【認定事実】
・平成25年10月、東京家庭裁判所は、被告の親族の申立てに基づき、被告の不在者財産管理人として不在者財産管理人弁護士法人を選任。その後、担当弁護士が、被告の財産管理を行うようになった。
・管理会社も数年単位で被告とは連絡が取れない、管理費の滞納があるなどから、原告が債務名義を取得し強制競売手続を行った。
・競売手続において執行官が被告専有部分のドアを解錠したところ、中に人がいた。
・この人物は執行官に対して金属棒を振り回すなどして抵抗し、強制執行手続を継続することができなかった。
・担当弁護士が被告専有部分を訪れても、チャイムや呼びかけに反応することはない状態が続いていた。
・令和4年5月、被告専有部分の下階の天井部分から漏水が発生。管理会社担当者と担当弁護士が被告専有部分に出向いたが、居住者は玄関扉を開けなかった。
・現に漏水が発生している状況から「緊急」と判断し、被告専有部分に強制的に立ち入ったところ、洗面所下に漏水跡が確認されるとともに、浴室の排水管が詰まっており、水が流れない状態になっていること等が確認された。
・上記確認が行われている間、被告専有部分の居住者は「外に出て行ってください」と繰り返し叫ぶという行動をとり続けた。
・令和5年5月、原告は定期総会において、消防設備点検及び雑排水管洗浄を行うことの妨害の禁止を求める訴訟を行うことを議決。同年10月に本件訴訟を提起した。

【裁判所の判断】
・原告の請求を全面的に認め、被告に対し、排水管の点検・洗浄の拒否禁止、玄関扉の解錠、および作業の妨害禁止を命じた。
・経済的利益の基準の採用について、原告は、被告側が請求の主要部分を認める和解案を提示し、裁判所が試行的な調査を促したにもかかわらず、これを拒絶して紛争解決を困難にした。
・この特段の事情を考慮し、経済的利益を800万円の半額である400万円として算定するのが相当である。

【結論】
・被告に対し、点検等の受忍に加え、弁護士費用として95万7000円(税込み)および遅延損害金の支払いを命じた。

大規模修繕工事新聞 2026年4月 196号