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管理会社に見捨てられる日―13年連続減少が示す「管理難民」時代の到来<ニュース速報04>

「管理委託費を値上げしなければ、契約の更新はできません」――そんな通知が全国のマンション管理組合に届くケースが急増している。そして値上げを拒否した管理組合の一部には、管理会社から「3ヶ月前の予告による解約」が突きつけられている。

国土交通省が2025年6月に公表したデータによれば、マンション管理業者の登録数は2025年3月末時点で1,776社。前年から28社減少し、13年連続の減少となった。一方で管理を委託する管理組合の数は増え続けている。管理する側が減り、管理される側が増える——この構造的なミスマッチが、いま管理組合に突きつける問いは単純だ。「あなたのマンションは管理会社に選ばれ続けられるか」。

13年連続減少の実態――「数が減る」より深刻なこと

管理業者数のピークは2012年度末の約2,100社。そこから13年で300社超が市場から消えた。廃業・合併・撤退の波は、中小の管理会社を中心に静かに、しかし確実に業界を再編してきた。

しかし問題の本質は「業者数の減少」そのものではない。残存する大手系管理会社が採算基準を厳格化し、「維持するコストに見合わない物件」から優先的に手を引き始めていることだ。

大手系管理会社が「他社物件」、すなわち分譲デベロッパーとの資本関係のないマンションから撤退する動きが顕著だ。自社グループのブランドマンションは離しにくいが、系列外の物件は純粋にコスト計算で判断できる。採算ラインを下回る物件には値上げを要求し、応じなければ解約——という判断が、今や「経営の合理化」として当然視されるようになっている。


値上げラッシュの構造――なぜ今、これほど急激なのか

2026年現在、業界では「委託費の値上げラッシュ」が続いている。その背景にある要因は複合的だ。

① 人件費の高騰
管理員・清掃員・フロント担当者の人件費は、最低賃金の引き上げと人手不足の慢性化によって急上昇している。2026年施行の改正マンション管理適正化法は管理業者への報告・説明義務を新たに課したため、フロント担当者の業務量は一段と増加した。「1人のフロントが担当できる物件数の上限」が現実的な制約となりつつある。

② 改正法対応コストの転嫁
2026年4月施行の改正省令により、管理業者には利益相反の事前説明義務、区分所有者への定期報告義務などが新設された。コンプライアンス対応・書類作成・説明会開催など、管理業務そのものの手間が増えた分、委託費への反映を求める動きが加速している。

③ 修繕工事受注による「赤字補填モデル」の崩壊
従来、一部の管理会社は管理委託費を低く抑えつつ、大規模修繕工事の受注による利益で全体を帳尻合わせしてきた。しかし公正取引委員会による談合調査の余波で、工事と管理の「抱き合わせ」モデルへの風当たりが強まっている。「修繕でも稼げない」「管理委託費でも赤字」という二重苦が、撤退判断を後押ししている。


「切り捨てられる」マンションの共通点

ではどのようなマンションが撤退・値上げの標的になりやすいのか。業界の実態から浮かび上がる共通点がある。

小規模・高経年マンションが最もリスクが高い。戸数が少ないほど管理委託費の総額が小さく、フロント1人あたりの担当コストを回収しにくい。さらに築年数が古いほど設備トラブルが多く、対応工数が増える。50戸以下・築30年超という条件が重なるマンションは、今や「管理会社から見た不採算物件」の典型とされる。

理事会・住民との関係が困難なマンションも候補に挙がる。役員のなり手不足で理事会機能が低下し、住民トラブルが頻発するマンション、あるいは管理費の未収金が常態化しているマンションは、管理会社にとって「リスクが高い割に実入りが少ない」と判断される。

値上げ交渉に応じない管理組合はより直接的なリスクを抱える。標準管理委託契約書には「3ヶ月前の予告による解約」条項が盛り込まれており、管理会社は法的に問題なく契約を終了できる。「拒否すれば撤退」という構図が現実のものとなっている。


管理組合に迫られる「生存戦略」

「管理会社に選ばれる側」という新たな現実を前に、管理組合はどう動くべきか。

値上げ要請には根拠を確認する
値上げを受け入れるかどうかの前に、まず「何がいくら上がるのか」の内訳を管理会社に開示させることが出発点だ。人件費・光熱費・新たな法対応コストの積算根拠を示させ、「便乗値上げ」かどうかを見極める必要がある。さくら事務所など専門機関は「根拠のない値上げには複数社の相見積もりで対抗できる」と指摘する。

管理会社を変える選択肢を常に持つ
「長年お付き合いだから」という理由だけで委託先を固定していると、値上げ交渉の主導権が管理会社に移る。定期的に他社の見積もりを取り、競争原理を維持しておくことが管理組合側の「交渉力」の源泉となる。

一部自主管理という現実解
清掃・管理員業務などを管理組合が自前で担い、専門性が必要な会計・設備管理だけを委託する「ハイブリッド管理」を模索する組合も増えている。小規模マンションほど自主管理への移行コストは低く、住民の高齢化が進む前に体制を整えておくことが重要だ。

管理の質を「資産価値」の観点で住民に共有する
「管理費を上げたくない」という住民感情は理解できる。しかし管理不全が放置されれば、中古売却時の査定でマイナス評価を受け、全員の資産価値が毀損する。「管理費は費用ではなく投資だ」という視点を総会・説明会で丁寧に共有することが、合意形成の土台になる。


まとめ

「管理会社は困ったときに助けてくれるもの」という前提が、静かに崩れている。13年連続で減少する管理業者数、止まらない委託費値上げ、大手系による不採算物件からの撤退——これらは単なる業界の話ではなく、全国74万棟を超えるマンションの住民が当事者となりうる問題だ

管理組合が「選ぶ側」から「選ばれる側」へと立場が逆転しつつある今、受け身でいることのリスクは年を追うごとに大きくなる。「値上げに応じるかどうか」以前に、「自分たちのマンションをどう管理したいか」を主体的に考える時が来ている。

大規模修繕工事新聞・ニュース速報 2026-04-19 04号