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大規模修繕での隣地の使用承諾、所有者が拒否 令和5年民法改正では「使用請求」から「使用できる」へ

 令和2年8月20日東京地裁
平成30(ワ)11855号 隣地使用請求事件

【当事者】
原告:管理組合X(管理者)
被告:マンションに隣接する土地(甲地、乙地、丙地)の所有者Y


【事案の概要】
本件マンション(昭和63年竣工)は南西側外壁のタイルに浮きやひび割れなどの劣化が見られたため、外壁全面の補修工事を計画しました。このため、原告である管理組合Xは、足場設置や作業員の立ち入り、資材置き場として、被告が所有する隣地の使用承諾を、民法209条1項(隣地使用権)に基づいて求めました。
これに対して被告は、対象地を月極駐車場として第三者に賃貸しており、(1)自分に被告適格がないこと、(2)マンション敷地内のみで工事が可能であることなどを理由に、使用を拒みました。
このため、管理組合Xが対象地の資料を求めて提訴した事案です。

民法209条(隣地使用権)について
・土地の所有者が、境界付近での工作物の設置や修理など、一定の目的のために必要な範囲で隣地を使用できる権利
・2023年(令和5年)改正で、「隣地の使用を請求することができる」→「使用することができる」という表現に改められ、権利としての性質が強まりました。

【裁判所の判断】
(1)被告の当事者適格
被告は「土地を賃貸しているため占有していない」と主張しましたが、裁判所は、被告が土地の所有者として間接占有しており、かつ使用を求める箇所が駐車区画そのものではなく通路等であることから、被告が管理支配権能を有すると認め、被告適格を認めました。
(2)使用の必要性
外壁タイルの劣化状況から工事の必要性は高く、安全かつ効率的な作業(作業員が電動工具等を持ち移動・屈伸するなど)のためには、外壁から約60cmの幅が必要となります。
マンション敷地内の隙間(約50cm)では不足しており、ピロティや開放廊下の利用、あるいはゴンドラによる施工は、物理的な困難や損傷のリスク、安全性の観点から代替案として不適当であると認められました。
(3)不利益の程度
足場の設置期間は順調にいけば約20日間であり、越境幅も限定的です。
設置・解体時に車両のすれ違いが一時的に困難になるなどの影響はありますが、期間が限定的であり、駐車場利用を全面的に妨げるものではないと判断されました。


【結論】
裁判所は、外壁補修工事のために被告土地1の全部、被告土地2の一部(境界から1.35m幅)、被告土地3の特定部分を使用することを承諾するよう被告に命じました。

大規模修繕工事新聞 2026年4月 196号