工事を進める上での問題点 ―施工者の視点から―
マンション大規模修繕工事を上手に行う方法とは
仮設足場の設置と車輌移動
足場とは、工事作業をするために設置する仮設の作業床や通路のことで、足場の設置によって計画的にまとめて行う修繕を「大規模修繕工事」と呼んでいます。
このように大規模修繕工事には欠かせない足場ですが、設置する際に特に居住者の生活サイクルと工事施工側に影響を及ぼすのが「車輌の移動」です。
車輌の移動をするケースでは敷地内での移動が最適ですが、車輌を置けるスペースがない場合、機械式駐車場など車輌のサイズで移動できない場合が考えられます。
検討しなければならない移動のパターンはおおむね4種類です。
①足場設置・解体時のみの移動(各1~2週間程度)
②全工事期間中の移動(2カ月~6カ月)
③マンション敷地内での移動と、敷地外への移動
④ その他(駐車場に現場事務所を設けるために車輌を移動する、など)
①足場設置・解体時のみの移動
多くのマンションでは建物に接して駐車場を区画しています。
大規模修繕工事では建物の外周に足場を設置するため、足場工事の際、足場部材の落下が懸念されます。そのために足場工事時期は一時的に車輌の移動が必要となる場合があります。
②全工事期間中の移動
①の期間のみならず、一部車輌においては、全体の工事期間車輌を移動する場合があります。その多くは足場を架設することにより、敷地的な問題で駐車が困難になるからです。
③マンション敷地内での移動と、敷地外への移動
場内において工事に影響されない空き駐車場がある場合、積極的にそちらへ移動します。
しかし機械式駐車場のように車輌の大きさによって移動駐車できない場合がありますので、注意が必要でしょう。特に大型マンションの場合、駐車場の空き状況や、車輌サイズまで把握しなければならない場合があります。
やむを得ず敷地外の月極駐車場に仮置きする場合もあります。敷地外駐車場を借りる場合、管理組合や自治会が率先して地域の町内会などに近隣の情報を得ると工事の進行がスムーズになります。
④ その他(駐車場に現場事務所を設けるために車輌を移動する、など)
現場事務所は工事の規模により必要となります。しかし限られた敷地に現場事務所を設置する場合、居住者駐車場に仮設事務所を設置することが多くあります。
厳密に言うと、現場事務所、作業員詰め所、資材置き場等があり、2台から3台の駐車スペースをつぶすことになります。
集会室や管理人室等がある場合は、部分的にでも現場事務所として開放されることが望まれます。
経費的な制約がありますが、レアケースでは近隣のアパート等を借りて現場事務所にすることもあります。
◎まとめ
大規模修繕工事を行う前段階の仮設工事から居住者の生活に影響が出ます。工事期間中はご不便をかけてしまうことになりますが、だからこそ管理組合の理解がないと工事が円滑に進まなくなります。
大規模修繕工事を上手に行う方法とは、施工者と管理組合、居住者が協力して行うことといえるでしょう。
(㈱ヨコソー 専務取締役 齋藤秀人)
(大規模修繕工事新聞 2014-6.5 No.54)