改正マンション建替え円滑化法が平成26年12月24日に施行された。6月に成立したから、半年で施行という異例の早さだ。
旧法と違って、旧耐震マンションの建て替えを促すのが狙いとされる。政府は、30年以内に7割の確率で発生すると首都直下地震を予測している。マンションは首都圏にとりわけ集中している。中央、港、品川区など都心区では、マンション化率は7割を超える。大地震が発生すれば、日本の重要機能が集中する首都に甚大な被害が予測される。ビル、マンションが倒れ、道路がふさがり、死傷者が出れば、首都の機能はマヒするのは確実だ。
改正建替え円滑化の特徴は、初めて5分の4による特別多数決議で、敷地売却制度を取り入れたことだ。特定行政庁が、耐震性に劣るマンションを認定、一定の手続きを経て、敷地売却組合を設立、敷地と建物の権利を集約、それを買受人(デベロッパー)に売却する。マンション所有者だった住民は、分配金を受け取る。借家人へは、補償金を支払い、借家権を消滅させる。国交省は11月14日に、「耐震性不足のマンション敷地売却ガイドライン案」を発表、売却への詳細な手続きを定めている。もちろん、建替えについても、規定が定められ、5分の4で、建替えが決議されるが容積率が緩和されるのが特徴だ。敷地条件により異なるが、5割の緩和だから、デベロッパーには有利な規定になる。
これまでネックとされた条件が取り払われ、画期的な改正だと歓迎する一部の学者、専門家もいるが、果たしてそうだろうか。
旧耐震マンションは全国で106万戸とされるが、そのうち東京都内に36万戸が集中する。旧耐震マンションは、
100戸前後の中小規模マンションが多い。赤坂、青山、麻布など高級住宅地にも多く建つ。そのほとんどは建築基準法による既存不適格建築物だ。用途地域の変更で、建物の高さ、容積が新らしい規制に違反する。既存不適格のマンションそのものは、違法建築ではないが、建て替えの際には、新規制の網が被る。高さが制限され、容積率も抑えられる。一方、自治体の日影規制の網も被る。
地域の住環境を守るために自治体が定めたもので、この規制の解除はむずかしい。旧耐震マンションの集中する都心の安全率を高めたいというのが国交省の狙いでもあるが、既存の規制が阻む。
あるデベロッパーは、「建替えで、まず管理組合と粘り強く、交渉するが、無理なら敷地売却をすすめるしかないですね」と指摘する。今回の基準では、耐震性不足の認定は、Is値(構造耐震指標)0.6未満だが、マンションによっては、0.2未満というところもあるという。何年も、建替え協議をしているうちに、大地震が来たら、と不安を募らせる管理組合もある。建替えか、敷地売却か、管理組合もむづかしい選択を迫まられる。マンションは全国に600万戸、管理組合数は10万組合と推定されるが、これまで建替えに成功したのは183だけ、そのうち東京都内が117を占める。建替えは地価が高い立地でないと成功しないとされる。
改正建て替え円滑化法は、果たし機能するだろうか。
(大規模修繕工事新聞 2015-1 No.61)