不成立になった建替え決議から見る管理組合運営
NPO日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』2014年11月5日付第386号「論談」より
◇合意形成の努力は
築40年の単棟型マンション。有志が建替えを進め、やがて建替え委員会を設置。建替え決議の総会を開催したが、5分の4の賛成を得られなかった。
それまで反対者はごく少数であり、建替えに伴う費用を負担すれば済むものだと思っていた。
しかし、行政による当該地域の高さ制限もあり、建替え後の戸数が当初の見積もりより少なくなり、区分所有者の負担が増えることも痛かった。
ただし重要なのは、区分所有者への合意形成に向けての説明等を丁寧に進めていたかにある。
◇長寿命化と建替えの判断と選択
前述の事例を教訓に生かしたい。
建替えは息の長いプロジェクトであり、成功には区分所有者の理解と合意が最優先となる。建物等が、修繕等を適時・適切にすれば長く持つかを調査し、長寿命化のためにやるべきことやコストとともに、建替えの場合は、その必要性やコストなどの客観性を保ちつつ、どちらが適切かを選択する判断材料として、「根拠」と「対策(方法)」を極めて合理的かつ論理的に明示することが求められる。
◇合意形成は家造り
家は土台を頑丈にしなければ、立派な外観であっても風雪に耐えられない。一見論理的でも根拠が脆弱であれば、柱を立てずに屋根を葺くがごとしである。
「少数の区分所有者が建替えに関心を持つ」ことから始まり、「多くの区分所有者が建替えをしたいと思う」ようになり、やがて「建替えをしたいと思う区分所有者が多数を占める」といった段階は、合意を積み重ねていくことそのものである。
◇リーダーは客観視しよう
建替えが不成功になった例では、リーダーの建替えの妄信、猛進がみられる。
「建替えを促進したい」と思っていても、建替えが決まるまでは、「建替えは必要なのか」との立場を維持したい。
自己を客観視できるリーダーが、さまざまなプロジェクトを成功に導く。それに加え管理組合の運営には、知識を身に付けると同時に、みんなと議論を積み重ね、倫理的、理性的、合理的、論理的にまとめていくリーダーが求められている。(論説委員会)
(大規模修繕工事新聞 No.62)