国土交通省マンション政策室は10月21日に「マンションの管理の適正化に関する指針」および「マンション標準管理規約」の改正(案)を公表し、約1カ月間の意見募集を受け付けました。
この結果を踏まえてマンション標準管理規約の改正を年内に発表するとしていましたが、関係者の話では「年度内か、さらに管理組合の総会シーズン(5月ころ)までか、と発表時期がずれ込む」ようだとされています。
そこで、主な改正案のポイントをいくつかピックアップし、そのコメントを簡単にまとめました。改正案が良くも悪しくもあくまで「標準管理規約」であり、各マンションの管理規約は各管理組合が独自で決めることが望ましいといえます。
◆暴力団等の排除
・ 12条、19条の2に関する専有部分の貸与に関し、暴力団員への貸与を禁止する規定
暴力団の排除のため、暴力団員を反復して出入りさせる等の行為について禁止する旨の規定を追加することも考えられる。
区分所有者の解約権は、区分所有者と第三者との間の契約における解除原因に係る特約を根拠とするものである。管理組合の解約権の代理行使は、理事会決議事項とすることも考えられるが、理事会で決定することを躊躇するケースもあり得ることから、総会決議によることが望ましい。
◆コミュニティ条項の削除
・27条、32条にあるコミュニティ条項の削除に関するコメント
管理組合の法的性質からすれば、マンションの管理に関わりのない活動を行うことは適切ではない。例えば、一部の者のみに対象が限定されるクラブやサークル活動経費、主として親睦を目的とする飲食の経費などは、マンションの管理業務の範囲を超え、マンション全体の資産価値向上等に資するとも言い難いため、区分所有者全員から強制徴収する管理費をそれらの費用に充てることは適切ではなく、管理費とは別に、参加者からの直接の支払や積立て等によって費用を賄うべきである。
◆外部専門家の活用
・35条、37条に関する外部専門家の選任
外部の専門家を役員として選任する場合には、その者が期待された能力等を発揮して管理の適正化、財産的価値の最大化を実現しているか監視・監督する仕組みが必要である。
このための一方策として、法人・団体から外部の専門家の派遣を受ける場合には、派遣元の法人・団体等による報告聴取や業務監査又は外部監査が行われることを選任の要件として、細則において定めることが考えられる。
外部専門家が役員となり、利益相反取引(直接取引又は間接取引)を行おうとする場合には、理事会で当該取引につき重要な事実を開示し、承認を受けなければならないことを定める。
◆役員の責務
・41条監事の責務の拡大について
4項「監事は、理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない」とあり、これまで「できる規定」として定めていたものであるが、監事による監査機能の強化のため、理事会への出席義務を課すとともに、必要があるときは、意見を述べなければならないとした。
◆理事議決権の代理行使
・ 53条関係で、理事が理事会に出席できない場合、配偶者等の代理出席を認めない
理事は、総会で選任され、組合員のため、誠実にその職務を遂行するものとされている。このため、理事会には本人が出席して、議論に参加し、議決権を行使することが求められる。
したがって、理事の代理出席(議決権の代理行使を含む)を、規約において認める旨の明文の規定がない場合に認めることは適当でない。
理事がやむを得ず欠席する場合には、代理出席によるのではなく、事前に議決権行使書または意見を記載した書面を出せるようにすることが考えられる。
◆価値割合
・46条関係の議決権割合の設定方法に関するコメント
住戸の価値に大きな差がある場合においては、単に共用部分の共有持分の割合によるのではなく、専有部分の階数(眺望、日照等)、方角(日照等)等を考慮した価値の違いに基づく価値割合を基礎として、議決権の割合を定めることも考えられる。
この価値は、必ずしも各戸の実際の販売価格に比例するものではなく、全戸の販売価格が決まっていなくても、各戸の階数・方角(眺望、日照等)などにより、別途基準となる価値を設定し、その価値を基にした議決権割合を新築当初に設定することが想定される。
(大規模修繕工事新聞 2016-01 No.73)