全国建物調査診断センターは7月24日、東京・京橋の㈱住宅あんしん保証本社会議室で「工事費節約」をテーマに大規模修繕工事セミナーを行いました。
大規模修繕工事を勉強された管理組合役員は、一般の組合員の理解と賛同のもと、総会の承認という大仕事が待っています。
工事費の予算合意を得なければ役員は孤立してしまい、せっかく検討した工事も実施できません。講演の一部から、「節約方法のあれこれ」を掲載します。
直接的費用の節約とは?
契約する工事費用そのものを予算オーバーしないように節約する場合、見積もり競争効果のほか、長期修繕計画や劣化状況、工事設計内容と予算とを総合的にマネジメントする。
国土交通省が発表している長期修繕計画標準様式を参考にすると、それぞれの長期修繕計画の不備がみえてくるケースがある。
①推定工事項目に「仮設工事」がない、②支出に「借入金償還」項目がない、③工事費用を積算するように数量と単価を記載する細目がない、④材料仕様等の記載例が盛り込まれていない、など。このように事前から長期修繕計画の不備を見つけ、それを資金計画に結びつける総合的なマネジメントによって直接的費用の節約が可能となるのだ。
間接的費用の節約とは?
大規模修繕工事では管理組合理事や修繕委員の物理的な拘束時間など、専ら検討に取り組む理事や委員の責任や負担が生じる。こうしたリスクを間接的費用と捉え、その節約を考える。
国土交通省マンション政策室へのヒアリング調査結果として、大規模修繕工事を管理組合が主導し、設計コンサルタントなど外部専門家を活用しているケースは40.7%。一方、管理会社主導は51.9%となっている。
経験的に戸数の小規模なものほど、管理組合主導の傾向が強い。管理会社のメリットはワンストップサービスである。
管理会社や設計コンサルタントへの委託業務として、大規模修繕工事の内容の組み立て提案、計画立案、見積もり作成、総会開催まで委託することで間接的費用が節約される。
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品質の良い工事の実施は結果、耐久性の向上につながる。大規模修繕工事のロングスパン化を念頭に入れたい。これが長期的な視野からの節約につながる。
長期修繕計画に昨今の建築技術の向上による内容が反映されておらず、不要不急な工事が計上されている場合がある。
これを見極める必要がある。
(大規模修繕工事新聞 第82号)
講師を務めた㈱リノシスコーポレーション・佐藤成幸専務