左近山団地中央地区管理組合は62棟・1,300戸で、所有者の63%が65歳以上
最優秀賞に ㈱スタジオゲンクマガイ
「団地まるごと公園化」テーマに
横浜市旭区の左近山団地中央地区管理組合が「団地再生の実現」を掲げて、一般から提案を募集するコンペティションを実施した。住民主催の団地再生コンペは全国でもはじめて。
左近山団地中央地区は今年で築48年。規模は62棟・1,300戸で、区分所有者の63%が65歳以上という。現在、5戸で相続人が決まらない住戸があり、今後増加するであろう相続問題、空き家問題に対して管理組合にフォローする機能はなく、団地の衰退化が懸念されている。
とはいえ、敷地内の豊かな緑、広々とした空間、一方で近隣には医療機関や学校、銀行、スーパーマーケットのある環境は、大都市・横浜の中でも優れた住環境といえる。
村上欽也理事長は「分譲当初は30代が多く、子どもがどんどん生まれて、活気があった。その人たちが高齢化した今、若い世代に来てもらえるような知恵を出せるかが問題」として、管理組合で横浜市の団地再生支援事業に申請したと話す。
管理組合役員も立候補制で昨年7人だったものが、2016年度は11人に増えた。横浜市の事業に申請、コンペ開催など、「管理組合の仕事に“しかけ”をしてモチベーションをあげる」(村上理事長)ことで、組合運営の活性化へとつなげていく効果もある。
コンペの結果、最優秀賞に選ばれたのは㈱スタジオゲンクマガイの「団地まるごと公園化」。中央地区集会所前のプールに木の板を張りウッドデッキの交流スペースにする、交通公園に芝生を敷き広場をつくり、ベンチを置くなど、外部環境整備で住民交流やコミュニティの活性化、新たな子育て世代の流入を狙うという。
「工事は来年6月の完了予定。そのときはお祝いのお祭りをやって、子どもたちの遊ぶ声を聞きたい」と村上理事長は話している。
「団地再生」検討から現在までの経緯
〇H26.7
平成26年度「横浜市団地再生支援事業」に選定される
団地に居住する住民が中心にとなって、団地の課題や再生に向けた将来像を共有していくことを目的に、『住民発意の団地再生』を支援する事業。管理組合にコーディネーターを派遣し、団地の課題整理や助言、将来像を共有するための団地再生マスタープランの策定等の支援を行う。コーディネーターは横浜市住宅供給公社から派遣。派遣費用:無料。
〇H26.10~H27.3
管理組合の諮問機関である中長期計画検討委員会において、7回の会合を開いてアクションプランの検討を行う。
・関東学院大学・中津教授を交えての街歩き・環境整備の課題と目標の検討・外部空間の使い方の確認・空き家対策についての勉強・アクションプランの構成・賃貸リフォーム等の見学・アクションプランの取りまとめetc.
〇H27.2
平成27年度「横浜市マンション・団地再生コーディネート支援事業」に申請・受理される。コーディネーターは横浜市住宅供給公社。※横浜市登録のマンション・団地再生コーディネーター8団体から派遣される。支援期間:1年~3年、年間 5 回まで。費⽤:無料。
〇H27.10
管理組合主催による団地再生の実現に向けたコンペティションを実施。応募者にはデザイン会社、大学研究室、マンション管理会社、建築士事務所、造園設計事務所など、24団体から提案があった。
〇H27.12
1次審査:審査委員による書類審査(非公開)
〇H28.1
2次審査:応募者によるプレゼンテーション(9団体)および住民投票(公開)
最優秀賞は㈱スタジオゲンクマガイ提案の『左近山ダンチパーク プロジェクト』に決定
→最優秀賞受賞者は管理組合からⅠ期整備地区の実地設計を委託された。
〇H28.5
管理組合総会にてⅠ期整備地区の工事費用を予算化
〇H28.7~
近隣の小・中学生の意見を聞くワークショップなどを展開
左近山団地中央地区管理組合
所在地:横浜市旭区左近山
竣工年:1968年(昭和43年)1月竣工
建物概要:RC造5階建て・62棟・1,300戸
建設会社:日本住宅公団(現UR都市機構)
管理形態:自主管理
公開プレゼンテーションの会場となった中学校の体育館。 1月24 日当日は約200人が 参加した
1 次審査を通過した9作品のパネルを展示。各団体のプレゼンテーション後、投票が行われた
設計提案の対象となった I期整備地区。
来年 6月の完成を目指して中央地区集会所前の プールと広場の環境整備 を行う
㈱ スタジオゲンクマガイが作成した、I 期整備地区完成後の地形模型(ジオラマ)