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全建センター第30回記念セミナ/大規模修繕100組合の教訓 紙上採録

3/26 東京・京橋 住宅あんしん保証本社会議室にて
 
高層、強風などにより、部分的に移動式昇降足場(リフトクライマー)を設置して作業を行った
 

全国建物調査診断センターは3月26日、東京・京橋の住宅あんしん保証本社会議室で第30回記念セミナーを開きました。セミナーは30回で参加者は1,000人を超え、毎回好評をいただいています。
今号では㈱リノシスコーポレーション(1級建築士事務所)の佐藤成幸専務が講師を務めた「大規模修繕100組合の教訓から学ぶ事例研究と考察について」から、その一部を掲載します。<構成:編集部>
教訓から学ぶ事例研究と考察
リノシスコーポレーション・佐藤成幸氏

よその管理組合ではどうしたのだろうか―?
自分がこれから取り組まなくてはならない大規模修繕工事の課題と同じような経験をした管理組合の情報に関心を持たれる人は多い。にも関わらず、その情報を入手するのが難しい事情があります。
管理会社の担当者は守秘義務などいろいろな制約があり、実際に経験した理事や修繕委員もそっと肩の荷を降ろした後に、工事の苦労話を他に発信して広く役立てたいというような、苦労をさらに背負い込むようなケースは少ないのです。
全建センターの「大規模修繕100カ所の実録」というサイトで100管理組合の修繕奮闘記を公開しています。こうしたサイトを利用しながら、日々時間が空いているときにでも情報を得ることができる環境があることを覚えておいてください。
この100カ所の実録の中で、私が経験した事例と絡み合わせて、こうしたほうが良い、こう考えたほうがよい、ということを話します。


仮設工事の選定

◇高層、強風からリフトクライマーを設置
物件概要/東京都足立区・2004年(平成16年)竣工・SRC一部PC、ALC造・地上13階、21階建て・2棟・194戸
工期/2015年5月1日~12月27日
仮設工事に関して、リフトクライマーを用いて養生を行った管理組合奮闘記の例を抜粋しました。
物件概要で注目したいのは21階という階高です。そこで工事をするに当たって、高層、強風というのがあるのでリフトクライマーというものを使って、工事を切り抜けましたという内容が奮闘記に書かれてあります。
実際に我々の経験でも、超高層になると天候の中での災害のリスクは共通で、どのような仮設を用いるかを重要視します。急いで工事をしてほしいということが品質のみならず危険にもつながりかねないという場合もありえます。
全体を養生シートで覆う仮設工事は、極端に居住環境が変わり、ストレス性が高いといわれますが、全面的に覆いをかけないリフトクライマーやゴンドラを用いることによって精神的な負担を軽減する効果が図られます。

仮設工事は建物の構造や規模、工事内容や工期、そして安全や居住者負担軽減、工事費用といったあらゆる角度からの総画王的な検討が必要な分野です。
ですから足場は何がいいですか、という質問に対する決定版の回答はありません。それぞれのやり方のメリット・デメリットを組み合わせることによって、選択をしていくということが大事な作業となります。
近年、仮設に関する費用は工事全体の中で非常にウエートを占めています。工事が終わればなくなる仮設だから安ければいいやと考える向きもありますが、実際、人命にかかわる事故も起きています。
管理組合に対する仮設足場の比較検討案を表にしました。管理組合の最大のニーズは何なのか?こうしたことを整理しておくことたいへん重要であろうと思います。
上からワイヤーで吊るしているわけではないので、風には強い。ただし、移動が遅いですね。上の方の現場にいくだけで20~30分かかるとか。そうするとどこに使うのがよいのかということを十分にシミュレートしないと、効率的に作業ができるかどうかのポイントになります。
(大規模修繕工事新聞89号)