全国建物調査診断センターは7月23日、東京・京橋の住宅あんしん保証本社会議室で第31回本音セミナーを開きました。㈱リノシスコーポレーション(1級建築士事務所)の佐藤成幸専務が講師を務めた「大規模修繕100組合の教訓から学ぶ事例研究と考察についてパート2」から、その一部を掲載します。次号は11月26日開催のセミナーから、管理組合元理事長と設計コンサルタントの対談を掲載する予定です。<構成:編集部>
◇下地補修に関わる事例①
物件概要/1975年(昭和50年)竣工・RC造(1部SRC造)・1棟・11階建て・70戸
大規模修繕工事新聞に掲載した「100組合の教訓」(ホームページをご覧下さい)から、今回の工事は3回目の大規模修繕工事であり、外壁の下地補修に注力した事例を紹介します。
特に外壁の既存塗膜の状況確認を入念に行い、必要な個所については塗膜を全面剥離する補修を行ったということが書いてあります。
下地補修というのは大変大事な工事です。塗装の前のコンクリートを補修することですが、今は仕上げ材であるタイルの割れや欠けの貼替え等も見積もりで項目計上するような過程になっています。
事例では、鉄部に関してケレン(剥がれかかった既存塗膜やさびを除去する作業)を重視し、ケレン作業を実施しにくい部位などにおいては、一部パネルを現場から撤去して作業場で塗装を行うなど、通常塗装を行わない部分についても入念に塗装を行っています。
鉄部も入念に
◇下地補修に関わる事例②
物件概要/199X年竣工・SRC造・8階建て・243戸
次に手抜きと言われる工事をされてしまった管理組合の事例です。
築21年目に2回目の大規模修繕工事実施しました。タイル貼り仕上げの外壁で、工事に先立ち、建物調査として打診調査を実施しています。
一般的な要項にならい、架設設備を用いず、歩行可能な範囲を打診したところ、浮き不良も経年程度の発生であり、特に1回目改修工事の注入処理あとも良好に対処がされている状態が確認できました。
ところが、実際に足場を架設してから妻壁や高所、目の届かない範囲でのタイルの浮きが極端に多いことが判明しました。やりかけたんだけれども途中でやめているところがすごく多くありました。
詳細を調査したところ、1回目改修工事のタイル浮きの注入工法がずさんであり、削孔しただけで注入せずにふたをしている個所があらゆるところでみられたのです。
バルコニーでもだれでもわかる部位はきちんと注入固定をしていましたが、目の届きにくい個所や足場がなければわからない部位は、ほぼ全数にわたり注入していない、意図的な手抜き工事でありました。
◇下地補修に関わる事例③
物件概要/200X年竣工・SRC造・10階建て・161戸
築後10年目に1回目の大規模修繕工事を実施しました。その際にアルミの手すり支柱になんらかの材料を充填しています。その手すり支柱から不具合が発生して、対処法がまるでわかりませんでした。
調査をしたところ、実態解明には至らず、当初の充填材料名は不明だったのですが、その性質から手すりの取り付け状況や構造、部材との相性・適合性を確認せず、とにかく充填を行ったため、科学変化による膨張を発生させたものではないかと推察されました。
下地補修に関しては、さまざまなケースがありますけど、検査、材料の選定等、非常に慎重な計画をした上で実施をしたほうがよいといえます。
(大規模修繕工事新聞96号)
支柱の工法選定にかかわるミスもある