理事会決議で理事長職解任 理事の過半数の一致で可能に
●判決の要旨
理事を組合員のうちから総会で選任し、理事の互選により理事長を選任する定めのある管理規約を有する管理組合で、その互選で選任された理事長職を、理事の過半数の一致により、解任することができるとした事例。原審では、役員の解任は総会の決議事項であるため、管理規約に違反している等、解任決議の無効を認めていた。しかし、最高裁が一転、「理事長職を解き、理事としたものであるから、この決議の内容が管理規約に違反するとはいえない」として、管理組合側の主張を認める判断を行った。
●事案の概要
舞台は、福岡県久留米市のマンション(築4年・158戸+店舗1)。2013年1月、管理組合設立総会を開催し、役員を選出。3月の理事会で互選により、Y氏を理事長に選出した。
ところが同年10月、Y氏は理事会決議を経ないまま、他の理事から反対されていた管理会社変更について、独断で臨時総会の招集を通知した。
こうしたY氏の行動に対し、10月20日の定時理事会(Y氏欠席)で、出席した全理事の一致により、A氏を新理事長とし、Y氏の役職を理事長から理事に変更する旨の決議を行った。
また、Y氏は翌年の総会で理事も解任された。このため、Y氏は管理組合に対し、理事会決議、総会決議等の無効確認等を求めて提訴した。
●最高裁の判断
役員の選任および解任については、総会決議を経なければならない。一方、理事の互選により選任された理事長については、理事の過半数の一致で理事長の職を解任できると解釈するのが相当である。
よって、出席した理事の全員一致により、Y氏の理事長職を解き、理事としたものであるから、このような決議の内容が本件管理規約に違反するとはいえない。
●一審・二審は管理組合が敗訴
平成28年3月の福岡地裁小倉支部の判決ではY氏の主張を認め、Y氏の理事長職を解任した理事会決議を無効と判断。その後に新理事長となったA氏が招集した総会も「権限がない者」が招集したものであり、総会開催の手続きに瑕疵があったものだとして、Y氏の理事長職解任を確認した総会決議は無効としていた。
また、同年10月の福岡高裁判決も地裁判決を追認していた。
(大規模修繕工事新聞98号)
管理規約の条文
第40条 管理組合に次の役員を置く。
(1)理事長
(2)副理事長
(3)会計担当理事
(4)書記担当理事
(5)理事
(6)監事
2 理事および監事は組合員のうちから、総会で選任する。ただし、区分所有者が法人の場合は、所有する法人の役員または従業員を代表者として届け出ることができるものとし、この場合は届け出された代表者を理事および監事として選任できるものとする
3 理事長、副理事長、会計担当理事および書記担当理事は、理事の互選により選任する
第41条 役員の任期は、原則として2年とする。ただし、再任を妨げない
2 補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする
3 任期の満了または辞任によって退任する役員は、後任の役員が就任するまでの間、引き続きその職務を行う
4 役員が組合員でなくなった場合には、その役員はその地位を失う
第53条 次の各号に掲げる事項については、総会の決議を経なければならない
(1)~(12) 略
(13)役員の選任および解任ならびに役員活動費の額および支払い方法