全国建物調査診断センターは11月26日、東京・京橋の住宅あんしん保証本社会議室で第32回大規模修繕工事本音セミナーを開きました。今回は川崎市のパークシティ溝の口から元理事長の鈴木寿一郎氏を招き講演を行っていただきました。
講演後は、㈱KAI設計の菅純一郎代表と㈱リノシスコーポレーションの佐藤成幸専務を交えたスペシャルトークショー。さらには会場の参加者からも活発な意見交換が行われ、非常に盛り上がったセミナーとなりました。
ここでは大好評を博したセミナーの一部を掲載します。<構成:編集部>
■よくある管理組合からの合意形成に関する「不安」事例一般
1.大規模修繕工事議案の総会で反対!って多数の意見が出たらどうしよう
⇒昨今の分譲マンションの社会情勢にからみても、十数年経てば大掛かりな修繕は必要だねということが、ほぼ理解・認識されていますので、よほどのことがない限り、実例しても総会時に反対の嵐が吹き荒れるということはありません。
もしあれば合意形成の手続きに非常に乱暴なことがあったことだけになります。
2.総会や工事説明会に出席していない人が多くて、本当に賛成してくれているのかわからない
⇒そもそも通常総会でどれくらいの出席率がありますか?最近、だいぶ下がっている事例のほうが多いですね。出る人が現理事、次期理事で構成されている場合が多いですね。
ただ、これが大事なところで、理事になることがバツゲームのように感じられる人がいますが、決してそうではありません。
理事をやることによって、見えなかったものが見えてくる、総会は出席したほうがいいんだなって気持ちを芽生えさせることが大事です。
3.工事中にバルコニーの片付けや制約に協力をしてくれない人が続出して、工事が進まなくなったらどうしよう。工事中に「そんなことは聞いていない!」って人が出てきたらどうしよう
⇒では「なんて聞いていましたか?」と尋ねてみましょう。
一定の経緯・経過の段階でいろんな発信をしているはずです。工事にはこのような制約がありますということを何度も何度も発信しているんですが、「そんなことは聞いていない!」という人がいた場合、こうしたことは何月何日こうしたものでたくさん発信していますよ、と事実の記録を履歴として置いておくことが必要になります。聞いていない方がいけないことだと思わせることです。
4.工事が失敗したら、他の人たちに責められる、責任をとれとか言われるのではないか
⇒大規模修繕工事というのは「何もしない」という行為で、例えば老朽化により(通常の保存行為や管理行為を怠り)、建物内に水が入って、漏水等で被害住戸が発生した場合、民法上の管理者、管理規約上の理事長が、その責任を問われることは、正当な話としてありえます。
5.こんなに多額の工事費用を一度に使用して無駄使いだとか非難されないでしょうか
⇒「何もしない」「お金を使わない」ということがいいというわけではなく、きちんとした修繕をやらないことのほうが、いろいろなリスクを生みます。
大規模修繕工事をはじめとした、大掛かりな計画修繕のために修繕積立金は積み立てられるものでありまして、逆に日常的な管理に修繕積立金は流用できません。
お金があるだけ使ったらいいのかというのではなく、そもそも修繕のために使うお金であります。ですから、これを適切に合理的に使うためにどうしたらいいか、使う前提で1円も無駄にしない方法はどうしたらいいのか、こういう発想の中で取り組みをされたほうがいいと考えております。
■トラブルが発生しにくい環境を事前段階からつくりあげておく
「知らなかった」「聞いていない」「対応する時間が足りない」等、事前に知っていれば、そもそもトラブルにならなかったこともあります。
そのためには、工事前の説明会だけではなく、事前の計画段階からの「知らせる」手法が重要となってきます。
(大規模修繕工事新聞98号)