大規模修繕工事を行うためには仮設足場を組み、作業員の安全確保と作業性能を上げる必要があります。いい加減な仮設足場をすれば、足場倒壊による事故も発生してしまいます。
このため、ほとんどのマンション大規模修繕工事の現場では、アンカーピンを躯体に打ち込むことで足場資材と建物を固定し、仮設足場の倒壊防止対策を行っています。
このアンカーピンは、コンクリート躯体に打ち込んだ後に先端部分が開くことによって、さらに頑丈となる仕組みになっています。
工事が終了すると、このアンカーピンは不要となるのですが、より頑丈にコンクリート躯体に打ちつけたことによって、取り外すことは容易ではなくなります。
基本的に取り外すことの難しいアンカーピンはそのままコンクリート躯体に埋め込んでいます。(写真①~⑤参照)
つまり、粗悪な(鉄分の多い)アンカーピンを使用すると、躯体の中で酸化し、錆が発生、コンクリートの爆裂を起こす劣化原因となるのです。
現在は錆びにくいステンレスアンカーを使用するケースが多いですが、価格競争によって下請け業者への圧力が大きいと「手抜き」につながることが考えられます。
ある大手の改修工事会社の現場代理人は「きちんとすべてのアンカーピンを検査・記録しています」と断言しましたが、元請けからみる下請けの仕事において「完璧」ということがあるでしょうか?
最良の策はひとつ。下請けの足場業者に資材の搬入を任せるのではなく、元請け業者が直接ステンレスアンカーを購入することです。
アンカーピンの埋め込みは避けられないとして、建物躯体保護のためには良質な資材のチェックを怠らないことではないでしょうか。
(大規模修繕工事新聞99号)
①足場資材と建物躯体を固定している状態
②工事が終われば足場を撤去する
③ただしアンカーピンは躯体の中に差し込んだまま
④アンカーピンの上からタイルをかぶせる
⑤施工後の様子