全国建物調査診断センターは11月26日、東京・京橋の住宅あんしん保証本社会議室で第32回本音セミナーを開きました。ここでは㈱リノシスコーポレーション(1級建築士事務所)の佐藤成幸専務が講師を務めた「大規模修繕100組合の教訓から学ぶ事例研究と考察について」から、「管理組合内の手続きや合意形成に関わるもの」の一部を掲載します。
ここでは大好評を博したセミナーの一部を掲載します。<構成:編集部>
■合意形成のポイント①
タイムリーな説明会の開催
大規模修繕工事の過程において、調査報告会や設計説明会、工事説明会、管理組合総会など、スケジュールに合わせて計画段階の節目ごとにタイムリーに集会を開催します。
遅すぎるタイミングは逆効果。また説明では反対や厳しい意見が出ても賛否をはかるわけではないので、「聞く」余裕を持つことも大事です。もらった意見もまだまだ取り入れるほどの余地がある、こうしたところが説明会の実際のポイントということになります。
また、工事着工前の説明会は経験上、工期が7カ月以上に及ぶような大掛かりなマンションの場合は、着工前と、工事後3、4カ月経った中間に実施することもあります。
中間に説明会を実施することによって、後半の工事に関しての居住者の協力度合いがうんとあがります。やはり3、4カ月も経つと忘れてしまうんですね。
自分のところに来るとなった段階で、人間は聞く耳を持てるということがありますので、長い工期に及ぶ場合は、工事着工前の説明会を中間時に開催すると経験上、極めて効果的だと考えております。
■合意形成のポイント②
肉体的・精神的な「嫌悪感」をケア
合意形成の支障になることに対して、工事の計画立案によるものや人と自治組織によるものに分け、その対処方法の具体例を上げました。
まず、肉体的な負担や精神的な不安からくる「嫌悪感」~嫌だなあと思う気持ち~をケアすることにより、居住者の賛同を得やすくすることが、実際の効果として非常に高いです。
大規模修繕工事を経験した方はお分かりだと思いますが、何が一番、住まいながらの工事でストレスになるか、あるいは環境が変わるかというと、仮設工事の足場です。
建設現場で足場を組んで建物の中に人が入って、日常生活を送っているということは、バルコニーの使用制限もさることながら、その足場に囲われているという事実だけでものすごいストレスがたまります。
ということは不安があり、嫌だなという気持ちになりやすいということですね。例えば、非常に暑いとか、風が通らないとか、足場や工事資材などで子どもが危ないとか、そういう工事に対する嫌悪感があるものの、具体的に「嫌です」と言いにくいので、クレーム的なマイナス意見につながっていくことが出てくるわけです。工事実施に対して、弱いが否定的な立場を取る人が出てくるのです。
こうしたものをケアしておかないと、シンパシーを感じる人たちが増えてしまうことになります。
(大規模修繕工事新聞99号)