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「火事が起きたときはつらかった」

「火事が起きたときはつらかった」

 

…ある管理会社フロントマンの手記より…


近年は異常気象、地震、台風と世界中で災害が猛威をふるっています。被災に遭われた方々はさぞかしつらかった思いをされたことでしょう
そしてこの「災害」という言葉は、ずいぶん昔、私が経験した、とあるマンションの火災事故を思い起こさせるのです…。
出火元は最上階の住戸からでした。すぐに消防車が駆けつけ、その火事はほとんど燃え広がることなく消火されたのですが、ここで予期しないことが起こったんです。
問題は火を消すために放水された「水」でした。二次被害とでもいうべきでしょうか。消火のために建物に放水される大量の水は、ナイアガラの滝のように流れ落ち、最上階から1階までを水浸しにしたのです。
とりあえず鎮火したものの、階下住戸の家財など、水浸しになったものは各戸がその保険などで賄わなければなりません。出火元には賠償義務がないからです。
とはいえ、原因は出火元の住戸ですから、被害にあった各戸に対しては20万円くらいの見舞金を払うのが一般的だといわれています。
ただ、そういうご家庭に限って支払えない傾向にあり、いたたまれず引っ越していってしまうという結果になりがちなんです。私が経験したケースもそうでした。
引っ越しの日、出火元のご家族がいざマンションを出発しようとしても、見送りなどありません。つらいなあ、と思っていたんです。
ところが、ふと気づくと小学生くらいの子どもたちが徐々に集まり出したんです。
それはお子さんがマンション内で友情を培った友だちでした。親同士の問題なんて、子どもたちには関係ありませんからね。
涙ながらに握手を交わし、姿が見えなくなっても力いっぱい手を振り続ける子どもたち…私はドラマのようなワンシーンを目のあたりにしました。
そして、子を持つ親として、不覚にも涙が、涙があふれ出ました。負けんなよ!って私も思い切り手を振っていました。
専有部分の火災保険も含め、防災対策はしっかりしましょう。これは自分やマンションだけでなく、周辺住民や自分の家族の人生も左右することもあるのですから。

(大規模修繕工事新聞101号)