高圧一括受電で修繕積立金を確保
外断熱改修による大規模修繕の挑戦
1階はエントランスと駐車場。2階~14階に1フロア2住戸で建設された小規模マンションでは「管理費もさることながら修繕積立金がなかなか増えず、苦しい管理組合運営を強いられていた」。5月20日、日本マンション学会北海道大会の見学会で最初に訪れたカルム円山で、区分所有者である羽山広文・北海道大学教授がそう話した。
羽山教授が理事長に就いた2006年、将来の大規模修繕工事に備えた資金確保のため、マンション全体の高圧一括受電方式を提案。定期総会で全戸賛成、2007年5月から高圧一括受電を開始した。
経済効果としては電力の個別契約と比較し、戸当たり年間5万円相当の電力料金の削減ができ、各戸の負担なく修繕積立金の約50%値上げが実現できたという。
2014年、羽山教授の2回目理事長就任時、大規模修繕計画に着手。簡易診断を行い、一般的な大規模修繕と外断熱工法の2通りの設計・積算をもとに定期総会で選択を図った。
高圧一括受電によって修繕積立金が確保したこともあり、断熱改修によるエネルギー消費量や室内環境の向上を説明したところ、「なんとか賛成を取り付けた」(羽山教授)。
とはいえ、「アベノミクス、震災復興、東京オリンピック開催決定などによる建設物価上昇の影響からか、外断熱工法による大規模修繕のコストは予算から1.3倍に増えた」とも。
当初は積立金会計で十分工事費を賄う予定だったが、銀行からの借り入れ(5年返済)も加わることになった。それでも外断熱工法により、次回の外壁修繕は30年後になるなど長期修繕計画を見直し、臨時総会も「乗り切った」という。
マンションは1フロア2住戸のため、中間住戸がなく、2住戸ともに角部屋となる。このため、外断熱改修の効果も平等に共有できる。羽山教授は見学会での参加者からの質問に「小規模だから合意形成が容易だったかもしれません」と答えていた。
現在、外断熱改修実施前後の室内温度とエネルギー消費量を計測中だ。今のところ、冬期間の室温は平均約2.2%上昇(約17%の省エネ)、暖房エネルギー消費量6.9%削減。総合的に約1.2%の省エネとなっているという。
さらに羽山教授は約15年周期での大規模修繕を改善できるのが外断熱改修工法の最大の魅力という。また、省エネ性能と室内温熱環境もさらに期待されている。
(大規模修繕工事新聞103号)
工事データ
○工事名/カルム円山外断熱改修工事 ○建物概要/2001(平成13)年6月竣工・SRC造・地上14階建て・1棟・26戸 ○発注者/カルム円山管理組合 ○設計・監理者/㈲大橋建築設計室 ○施工者/勝井建設工業㈱ ○外断熱改修施工者/Sto Japan㈱
○主な工事内容
・屋上/アスファルト防水断熱、硬質ウレタンボード50mm
・外壁/東西面:乾式工法XPS断熱材75mm+ガルバニュウム鋼板t0.4貼り
湿式工法EPS断熱材75mm+メッシュ入り高耐久塗材仕上げ
・バルコニー/湿式工法EPS断熱材75mm+メッシュ入り高耐久塗材仕上げ
・その他/残存するタイル面の補修、バルコニー内の床ウレタン防水、天井手摺壁の補修、換気フード交換、スリーブの延長、1階車庫天井内断熱材充填等
○工事期間/2016年3月~2016年7月
外断熱改修施工者:Sto Japan(シュトージャパン)株式会社
■本社
〒102-0093
東京都千代田区平河町2-11-1 平河町ロンステート1F
でんわ03-5216-1530
代表者:佐々木 隆 設立:2005年(平成17年)12月
資本金:6,600万円
//www.stojapan.com
←完成時の北側外観
北側のバルコニー内
ガルバニュウム鋼板
南面のバルコニー内
全戸賛成で高圧一括受電を開始した