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アスベスト(石綿)調査の必要性

アスベスト(石綿)による健康被害が大きく報道され、労働安全衛生法、大気汚染防止法、石綿障害予防規則など、関係省においてもアスベストに関する法令等の改正が進んでいます。
 実はこのアスベスト問題、大規模修繕工事にも該当するケースがあると考えられます。
当然のことながら施工会社は作業員や居住者の健康に関することでもあり、法令等の遵守は必須となります。
とはいえ、アスベストの有無、包含率についての調査費用、さらには工事中のアスベスト飛散防止対策費用の問題が発生し、管理組合の十分な理解が得られるとも限りません。
管理組合としても、このアスベスト問題が自分のマンションにどのような影響を及ぼすのか、知識を得ておく必要があると言えるでしょう。

大気汚染防止法、石綿障害予防規則、環境確保条例(東京都)の規制内容

アスベスト(石綿)とは?
天然に産出された繊維状ケイ酸塩鉱物のこと。1970年~1990年に大量に輸入され、保温・断熱・防音等の目的で建築物に使用されてきた。しかし、空気中に浮遊するアスベストの吸入が原因で悪性中皮腫、肺がんなどの発症が確認され、社会的問題となっている。


関係省のホームページ
環境省/石綿(アスベスト)問題への取組
//www.env.go.jp/air/asbestos
厚生労働省/アスベスト(石綿)情報
//www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/sekimen
国土交通省/アスベスト問題への対応
//www.mlit.go.jp/sogoseisaku/asubesuto

◆大規模修繕工事との関係
(1)受注者(施工会社)は、作業員が作業中にアスベストを吸入しないように対策をとらなければならない。
(2)受注者(施工会社)は、解体等工事(解体、改造、補修作業を伴う建設工事=規模等にかかわらず全ての解体等工事が事前調査の対象)を行う場合、アスベスト使用の有無について事前に調査し、発注者(管理組合)へ調査結果を書面で説明しなければならない。
(3)発注者(管理組合)は、着工前に受注者(施工会社)から建材の事前調査結果を書面で説明されたか、必ず確認しなければならない。また、事前調査費用を適正に負担しなければならない。
◆事前調査について
(1)次の建材の使用の有無を調査する。
○特定建築材料(吹付け石綿、石綿含有保温材等)
※吹付け材については、石綿の有無だけでなく、分析により含有率を把握すること
○石綿含有成形板(窯業系サイディング、石綿含有仕上塗材等)
(2)事前調査を実施する者
「石綿に関し一定の知見を有し、的確な判断ができる者(※)」が事前調査を実施すること
※①建築物石綿含有建材調査者
②石綿作業主任者技能講習修了者のうち石綿等の除去等の作業の経験を有する者
③日本アスベスト調査診断協会に登録された者
◆調査結果の掲示
○掲示場所
・公衆に見やすいように掲示板を設置
○掲示内容
・調査の結果 ・調査を行った者の氏名又は名称及び住所 ・調査を終了した年月日 ・調査方法 ・特定建築材料の種類と場所
○掲示期間
・解体等工事の開始時から終了時まで



まずは管理組合の情報収集、理解が大切

アスベスト含有製品は現在、法的に製造・使用等が禁止されていますが、平成16年までの建築物には使用されている可能性があります。
アスベストが含有している部位では、施工会社は特別な飛散防止対策として、作業員が防塵マスク、防塵服を着用して作業を行っているといいます。
また着工後にアスベスト含有建材が見つかった場合、建材の分析や大気測定の追加実施をすることになります。正しい知識のない周辺住民への風評被害も頭に入れておかなければなりません。
アスベスト含有建材があるにもかかわらず工事を行った場合は、行政機関からの指導(発注者、受注者ともに告発される可能性もあり)を受けることになります。
以上のことから、工期・工費ともに大幅に膨らむことが考えられます。まずは工事を検討している管理組合が自ら情報収集をして、理解を進めておくことが大切といえます。

(大規模修繕工事新聞 105号)