マンション管理業界では管理組合財産の毀損事故を防止するため、既存事故の事例を想定し、再発防止策に 取り組んでいます。「現金事故を防ぐポイント」と題して、その一例をシリーズで紹介します。 〈協力:双日総合管理㈱ 難波純一〉
〈事故事例2〉
管理会社のフロント担当社員が親切を装いながら(私 がすべてやりますから安心してください等)、理事長から 管理組合名義の保管口座の印鑑と通帳を預かっていた。 そして、その保管口座から現金を引き出し、着服を繰り 返していたのである。
当該フロントは着服を隠ぺいするため、本社のマンショ ン会計部に金額を改ざんした通帳ならびに銀行残高証明 書のコピーを提出。しかし会計部は通帳、銀行残高証明 書の原本を確認することなく、コピーのみで確認をした。 当該フロントは、同じ物件を長期間担当し、管理組合 や会社からも信頼を得ており、理事会とのやり取りを一 人で行っていたため、覚知が遅れたという。
<再発防止策>
①現在のマンション管理適正化法では、管理会社が理事 長印の保管を禁止している。
②管理組合が保管する通帳・印鑑等の保管状況を管理組 合と共同で確認し、「通帳・印鑑等の保管台帳」等で管 理する。
③フロントが通帳または銀行残高証明書を改ざんできな くするため、管理会社のマンション会計部は、銀行口座の残高を銀行残高証明書のコピーではなく、銀行残 高証明書の原本で確認する。
④理事会へは担当フロントだけでなく、年に数回、複数 名で出席する。
⑤なつ印代行行為、予備の払い戻し請求書へのなつ印の 禁止を業務手順書に追加する。
〈事故事例3〉
管理会社のフロント担当社員が理事長の交代時に管理 組合の理事長印を一時的に預かり、現金支払い指示書(架 空の組合発注工事代金を請求)ならびに銀行の払い戻し 請求書を偽造し、支払手続きを行い、本社のマンション 会計部から受領した現金を着服した。
当該フロントは、過去の実際の請求著をカラーコピーし、工事内容や金額を改ざんして、架空の請求書を作成。 着服を隠ぺいするため、会社向けと管理組合向けの2種 類の月次決算報告書を作成し、それぞれに提出していた。
〈再発防止策〉
①事例2の再発防止策と同じ
②本社のマンション会計部は支払いの際、請求書・領収書・ 工事完了確認書原本を確認する。 ③工 事代金の支払いは振り込みとし、現金での支払いは 認めない。
④マ ンション会計部は、月次決算報告書を理事長に直接 郵送する。
(大規模修繕工事新聞 107号)