大規模修繕工事への取組方法について
トータル・マネジメント(TM)方式の 代表的なフローと内容
講師:㈱リノシス・コーポレーション
佐藤成幸専務取締役(マンション管理士)
第1段階:パートナー施工会社の選定作
施工会社をパートナーという呼び方にしているのは、 「単に見積もり金額が合ったから工事をしました」という ような、自分のところの儲けと実績作りのためだけでは なく、少しでも管理組合に寄り添いながら工事をすると いう意識づけの意味、工事の成功に対して管理組合と共 に歩んでいく会社であるということを理解してもらうた めに、期待を込めてこうした呼び方をしております。
第1段階でパートナー施工会社が行うことは、建物調 査診断、工事仕様の作成と工事見積書作成、実際の工事 責任施工の実施ですが、そのためには実績や技術力、経 営的信用力等が求められております。 パートナー施工会社の選定は相当に重要な位置づけで あり、いかにして優秀な会社を選定するかが大きなポイ ントとなります。
プロジェクト・マネジャーの一番大きな仕事は、この パートナー施工会社を選ぶにあたってのより良い環境作 りです。
見積書や提案書によるコンペティションの開催。プロ ジェクト・マネジャーはコンペティションが公正・公平 に実施できるよう、統一基準のコンペ要項書を作成し、 各社競争のもと、見積書、提案書を提出させます。 最終的にはプロの目線で施工会社を総合的に評価し、 管理組合が選定しやすいよう助言を行います。
第2段階:パートナー施工会社による建物調査診断の実施
プロジェクト・マネジャーは施工会社本位の建物調査 診断とならないようにするため、事前に調査診断の計画 書をチェック。計画書内容に対しての指示や指導を行い、 過不足のない調査診断を施工会社に実施させます。 また調査診断時には立会い査察を行い、計画通りに調 査診断が行われているかのチェックも行います。
プロジェクト・マネジャーの役割
①パ ートナー施工会社が実施する「建物調査」「改修 設計」「居住者説明」「工事」の各行為がきちんと契 約通りになされているか、また管理組合の利益にか なう内容かを管理組合目線でチェックする。
②プロジェクト全般のマネジメントおよびスケジュー ル管理ならびに予算管理等を行い、管理組合の利益 保護を図る立場にて業務を行う
第3段階:パートナー施工会社による改修設計の実施
パートナー施工会社には不具合個所、改修必要個所の 工法と仕様の計画書、あるいは詳細の工事コスト案2,3 パターンの比較表を作成してもらいます。 このとき、プロジェクト・マネジャーは施工会社本位 の工法や仕様、低品質の工事内容になっていないか、妥 当な工事コストかどうかチェックします。
第4段階:パートナー施工会社による工事の実施
工事の実施にあたり、パートナー施工会社には、工事 管理体制、品質管理、安全管理、工程管理を合理的に進 捗させるための資料を提出してもらいます。 特に品質管理については、自主検査の体制等を厳格に チェックするため、検査の時期、検査の回数、検査方法、 検査チェックリスト、手直しが発生した場合の方法とそ の後の再検査方法までを作成してもらいます。 プロジェクト・マネジャーは、自主検査体制にのっとり、 順次検査が実施され、手直し補修も含めて記録が有効に なされているか、竣工図書に不備がないかをチェックし ます。
(大規模修繕工事新聞 108号)