あらためて監事のあり方を考える
NPO日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』2019年1月5日付第436「論談」より
どこの管理組合の総会 議案書でも「監査報告」が載っており、監事の署名なつ印(コピーあるい は写し)がつけられてい るのが通例である。
理事会が発行する議案書に掲載されているが、監査報告のページだけは作成の 責任者が異なっており、理事会ではなく、監事である。
独立の文書にするとかえって不便になるので、便宜上 で議案書に一括されているだけのことである。
◆監事は組合員に責任
監事は管理組合の総会で、理事とは別に直接選出され、理事会が法令や規約、総会決定にそって業務をしている かを監視するのが任務である。
したがって、選出された総会に直接責任を負っている。監査報告は理事会に対してするのではなく、直接組合員 に対して行う。
監事は理事会に出席し、理事長や理事に意見を述べることができるが、理事会は、その意見に必ず従うべき義 務はない。監事と理事会の間に意見の相違があれば、最終的な判断は総会での組合員の意思で決まる。
◆監事報告つくる責任
先日、「監事が(監査報告に)署名なつ印を拒否したので総会ができない」とマンション管理士が言うので困っているとの話を聞いた。
確かに監査報告は総会の必須事項だが、監事の都合で監査報告が出されなかったといって、総会が開けないということはない。
そもそも監事は、自ら適当と思う監査報告を作成する権利と義務があるのだから、「署名拒否」など本来はありえない。
会計や業務が適正か不適正化を自分で判断し、その理由を書けばよい立場にある。監査報告をつくる責任は監 事にあって、理事会にはないのである。
◆監事の強大な権限
万一理事会に不正や不当な行為、あるいは総会の決定の大幅な逸脱などがあった場合には、監事は総会の招集 を含む強大な権限をもっている。
現に最近、監事が総会を招集して、総会決定を実行しない一部理事の罷免を提案・可決した事例で、監事の行 為が正当なものとして裁判所に認められた例がある。
監事には、自らの権限を有効に利用し、組合員のために理事会とは別の角度から、大いに努力することを期待するものである。
(NPO日住協論説委員会)
(大規模修繕工事新聞112号)