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改修工事に100%はない!精度の限界 Part1

改修工事に100%はない!精度の限界 Part1

大規模修繕工事に関する知識と情報を得るために…
一般社団法人 マンションリフォーム技術協会

大規模修繕工事は住まいながら作業を行うため、騒音、臭気、粉じん、毒性の高い材料の使用等に大きな制限があり、さらに短工期で仕上げまでを求められる。
このため、必ずしも100%完璧な工事は不可能と言っても過言ではない。
一般社団法人マンションリフォーム技術協会は2011年8月、外装が主体の大規模修繕工事にも限界があることを管理組合に理解してもらえるよう、小冊子『精度の限界』を発行した。

事例1 「精度の限界」

04-01床シートの水たまりの処理の限界

共用廊下やベランダ床のシートに使われている材料は、耐候型防滑性であるだけでなく、シート
の端部やシートのジョイント部からの雨水浸入を防止することが目的だ。
雨水の浸入は、コンクリートを通過して鉄筋を錆びさせることから、構造体の劣化につながるため、重要な工事といえる。
ただし、床の凹みは人間の技量では直しきれない。そこで、シートの上に水がたまりやすくなったというクレームが出やすくなる。
これは材料の止水能力が今までより高くなった結果であるが、勾配の取り合いで水がたまったようにもみえてしまうことにもつながる。
住宅の品質確保の促進等に関する法律(住宅品確法)で標準価値が示される。これによると、3㎜超の誤差は瑕疵、1.5㎜程度の凹みはやむを得ないと考えられている。
共用廊下の形状では、各扉、エレベーター入口、階段入口等、勾配をつけづらい個所がある。
ひとつの事例としては、1.5㎜以下を判断する方法として、約1.5㎜の厚みの10円玉を利用して手直しの判断目安とし、補修しているケースもある。

事例2 「精度の限界」

04-03シールの打ち替えを見栄えの限界

タイル目地のシーリング材の仕上げは(タイルの形状にもよるが)、ヘラの作業等の工夫がポイントとなる。
ただし、タイル目地の中にシールがはみ出すような見栄えになることもある。シーリングの主性能要求は綿防水材であるため、意匠性(見栄え)の追及には限界がある。
シーリング打ち替えの際の既存シーリング材の撤去についても、新築の施工時による凹凸が多く、凹み部分に入り込んでいるシーリング材を完全に撤去することは極めて難しく限界があるといえる。

事例3 「精度の限界」

タイルの浮き補修の限界

04-051)タイル浮きはすべて直すのか
基本的なタイル浮き補修方法は、張り替え、浮いている部分へのエポキシ樹脂の注入、ステンレスピンで浮き部分を抑える工法がある。
タイルは剥落した場合の危険度を考えて、補修方法を考える。内壁や、人間の腰より低いところなど、タイルがはがれても大きな事故につながらない個所は、補修しない場合がある。コストが上がるだけでなく、健全な部分に悪影響を与える可能性があるからだ。

 

04-042)タイル浮き部の打診の空隙音はすべてなくなるか
タイルの下には、モルタル面がある場合と、下地モルタルがなく直張りあるいはそれに近い状態のものがある。
打診でわかるタイルの空隙音をなくすまで浮いている部分へエポキシ樹脂を注入することは難しい。目的はタイルの落下防止を行うことであり、エポキシを注入することではない。

このことから、細かく画びょうで紙をとめるような感覚の補修方法を採用した場合は、無理なエポキシの注入を行わないケースもみられる。
すなわち、このようなケースでは浮き音が残っている場合が多いと言え、浮き音=補修工事不良とはならない。

3)タイル付着強度不足はなおるか
タイルの浮き補修は、基本的にはタイルを打診して補修を行っていくが、浮き音がしない部分は補修を行わないのが一般的である。かなりのコストアップを覚悟しなければならないからだ。
しかし、浮き音がせず、補修を行わなかったタイルの付着力が必ず健全であるということは言い切れない。常識的には、大規模修繕後であってもタイルの浮きに変化がないか定期検査を行うのがよいのではないかと思われる。

事例4 「精度の限界」

外壁タイル面のひび割れ・欠損補修の限界

05-011)タイルひび割れ部はすべてなくなるか?
タイルのひび割れは、躯体に入ったひびが原因であり、放置すれば雨水が浸入する。
原則として張り替えとしている設計者も多いが、足場をかけなければ気が付かないところならそのままにする場合もある。
限られた予算内でどのレベルまで改修するのか、どこまでを張り替えるか決めて施工することになる。

 

 

05-022)タイル目地部の不具合はすべてなくなるか?
タイルの目地は、タイルとタイルをつなげて面で持たせたり、タイルの裏側に水が回るのを防いだり、下地の伸縮を吸収したりする働きがある。
取れた目地は埋め直すことが原則である。
だが、すべての目地を新築時のように埋め戻せばいいが、非常にコストがかかる。また、目地痩せした程度で薄塗りのように埋め直しても、効果は期待できない。
埋め戻すレベルには限界があり、無理に埋めても薄すぎて再剥離を生じさせたり、目地の色違いを起こしたり、白華現象(エフロレッセンス)を起こすなどのクレームにつながる。

このため、明らかな目地の欠損は補修し、その他は止水性を高める工法などを採用して目地からの不具合を進めさせないようにするケースもある。

事例5 「精度の限界」

張り替えタイルの色合わせの限界

05-04タイルを張り替える場合、既存タイルと新たなタイルで色違いが生じることがある。
色違いが出ないように既存タイルの実物を工場に送り、見本焼きを行う。
しかし、横光を直接受けると反射の違いも含め、色違いの問題が生じることもある。
問題は色・ツヤ・凹凸状況すべてを合わせる必要があるが、実際には日当たり、風雨の影響で東西南北、低層・高層部分で色違いが生じているものもある。
見本焼きではこのすべての面、すべてのタイルに色合わせすることは不可能である。タイル目地の風化の差も激しく、すべての目地に合うとは言い切れない。
以上により、タイルの色合わせに努力しても限界がある。

タイルの製作期間について
タイルの製作は、まず既存タイルを抜き取り「見本焼き」を行い、その精度を管理組合・設計者・施工者が確認。了解を得て初めて「本焼き」に入る。
「見本焼き」に要する期間は1カ月程度。「本焼き」にはさらに1~2か月程度を要する。
このため、決められた工程内では、2回以上の見本焼きは工事の進捗状況に影響が出ることになる。

05-05『精度の限界』
大規模修繕工事の出来栄え・保証・精度に関して事前に知っていただくために
2011年8月1日発行
A5判・全52ページ ・1,200円(税込)

 

 

(大規模修繕工事新聞 2014-4.5 No.52)

 

 


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