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マンション管理組合総会決議無効確認等請求控訴事件

浴槽やトイレも修繕積立金で更新!? 専有部設備の一体改修を決議

●判決の要旨
「区分所有法には修繕積立金を専有部分改修に使用してはならない旨の規定はない」とし、原告区分所有者の訴えを退けた。
原告の訴え:平成24年4月7日の第29期臨時総会の決議は無効である
平成24年7月28日の第29期臨時総会の決議は無効である

●事案の概要
 神奈川県藤沢市所在のマンションの区分所有者である原告2人が、被告である管理組合に対し、管理規約の改正(共用部分等の管理、修繕積立金の取り崩し)、請負契約の締結、借り入れおよび修繕積立金の使用に関する総会決議の無効を求めた事案。
神奈川県藤沢市所在のマンション(昭和42年竣工・RC造・5棟・175戸)
平成24年4月7日の第29期第1回臨時総会の決議
組合員総数および議決権総数の各4分の3以上の賛成多数により、管理規約の改正(共用部分等の管理、修繕積立金の取り崩し)を決議した。
平成24年7月28日の第29期第3回臨時総会の決議
組合員総数および議決権総数の各4分の3以上の賛成多数により施工会社との請負契約を、過半数の賛成多数により借り入れの返済金として修繕積立金を充当する決議をした。
その後、管理組合は施工会社との間で、マンションの工事の請負契約を5億9,745万円で締結した。
工事の内容は、マンション全体の給排水管・ガス管の更新、各住戸のバランス釜・浴槽の撤去とユニットバスの設置、給湯器の交換、トイレ設備の交換、洗濯パンの新設、給水システムの変更(直結増圧方式)であり、工事対象には共用部分に属する給排水管・ガス管だけでなく、専有部分に属する給排水管・ガス管、浴室設備、トイレ設備、給湯器、洗濯パン、洗面化粧台などが含まれていた。工事期間は、平成24年9月~平成25年10月(14カ月間)。
工事は平成25年4月末ころまでに原告住戸等、4戸を除く171戸で完了し、管理組合は工事代金を支払っている。

●原告の主な主張
・浴室、トイレ等の専有部分の設備工事を一体として行う必要性はない
・専有部分の改修工事に修繕積立金を充てる決議は、すでに専有部分について先行工事を行っていた区分所有者との間に不均衡が生じる
・修繕積立金を用いて工事が実施されると、工事によって設置されたユニットバス、トイレ等の設備の所有権が管理組合に帰属することになることになり、区分所有という仕組みの基本に反するため、決議は無効である

●被告の主な主張
・専有部分に属する給排水管、浴室、トイレ等の設備は一体的かつ効率的な管理のために必要なものであり、区分所有者の共同の利益に資するものである
・配管類の交換で、浴室の床をはつり、既存の浴室を再設置するには、①多額な費用のかかる防水工事が必要となる、②配管類のみ交換すると旧設備から漏水する危険がある、③撤去したバランス釜・浴槽を再接続する部品の調達ができないおそれがある。このため共用部分の工事とともにユニットバス化に更新する必要があった
・トイレ設備は共用部分の給排水管と物理的に接続されていて、共用部分と物理的一体性を有する部分であり、配管類のみ更新しても旧設備から漏水する可能性がある
・先行工事をした区分所有者に先行工事代金を補償すると、修繕積立金の負担で従前の更新設備による利便性の利益を与えることになり、かえって公平性を欠く結果となる
・既存設備を続けて使うことを希望した区分所有者に対しては、標準品の価格相当額をオプション工事代金から値引きすることによって実質的な補償をしている

(大規模修繕工事新聞99号)

○決議1(規約20条4項の新設)
「専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分及び共用部分の管理上影響を及ぼす部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる」を新設する。

○決議2(規約26条2項の改正)
26条2項 修繕積立金は、次の各項に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる
4号 第20条4項の修繕

○決議3(請負契約の締結)
管理組合と施工会社との間で、マンション全体の給排水管・ガス管の更新、各住戸のバランス釜・浴槽の撤去とユニットバスの設置、給湯器の交換、トイレ設備の交換、洗濯パンの新設、給水システムの変更(直結増圧方式)を内容とする請負契約を5億9,745万円で締結した。工事期間:平成24年9月~平成25年10月(14カ月間)

○決議4(借入れ及び修繕積立金の使用)
住宅金融支援機構から2億6,250万円を返済10年、予定金利年1.3%で借り入れ、返済金に修繕積立金を充てる。

○決議5(管理費の振替え)
管理費の剰余金2,000万円のうち、1,000万円を修繕積立金に振り替える。

【コメント】
 判決では「浴槽、給湯器、洗面化粧台、便器は、共用給排水設備と連結しているから共用部分と一体の設備として共用部分と共に回収すべき設備物である」と、管理組合の主張を認めた。
 確かに配管類については本管と枝管が構造上一体となっていたため、その管理については管理組合が共用部分の本管と専有部分の枝管一体の工事をしたほうが効率的と思われる。
 しかし、浴槽や洗面化粧台等はマンションの形状、個々の設備機器の設置状況によって、一律には行かないケースが多い。
 さらに修繕積立金はあくまで共用部分の管理のために積み立てられるのであって、個人の趣味にも左右する家財にまで充当することができるのか等の疑問も残る。


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