Point
① ペット飼育を禁止する管理規約にする場合、「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすとき」(区分所有法31条1項後段)に当たるかが問題になる。
② ペット飼育が事実上容認されている場合の管理規約変更は「特別の影響」に該当する可能性が高く、変更にはペットを飼育する区分所有者の承諾が必要になる。
③ 経過措置を設けたり、一部制限をすることにより、「特別の影響」に該当しないようにする工夫が必要である。
④ 管理規約変更後、ペット飼育をはじめた区分所有者等に対しては、区分所有法57条に基づく差止請求またはペット飼育禁止規約に基づく差止請求が認められる可能性が高い。
事例マンションは、管理規約にペットの飼育を制限する定めがなく、ペット飼育は容認していました。ところがペットに関するルールもない状態であることから、ペットに関する苦情が増え、トラブルが多くなってきました。そこで、ペット飼育を禁止する管理規約に変更しました。
この場合、管理規約の変更が「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすとき」にあたり、ペット飼育中の区分所有者等から承諾を得なければならないのではないかが問題になります。
事例マンションではペット飼育中の区分所有者等の承諾は必要といえ、全面禁止は難しいと考えられます。現在飼育している「1代限りは認める」等の経過措置、一部制限等を設けるなど、「特別の影響」に該当しないようにする工夫が必要であるでしょう。
一方、管理規約でペット飼育を禁止されているマンションで、規約違反をしている場合は、共同利益背反行為に該当するとして区分所有法57条に基づく差止請求やペット飼育禁止規約に基づく差止請求が認められる可能性が高いといえます。
ペット飼育禁止マンションで、「1代限り」という条件で飼育を認めたにも関わらず、2代目を購入し、飼育をしていた賃借人とその区分所有者に対し、管理組合が訴訟を起こした判決例(平成28年3月18日東京地裁判決)があります。
裁判所は管理組合の主張を認め、マンションの居室内でのペットの飼育禁止を命じる判断を下しました。
(大規模修繕工事新聞 124号)