大規模修繕工事 周期見直しの検討を
NPO日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』2020年3月5日付第450号「論談」より
外壁、給排水設備、屋根防水―マンション大規模修繕工事は、平成17年に国土交通省が修繕計画の目安となるガイドラインを公表。それから15年が経った。ガイドラインに示された主要部分の12年周期は、開放廊下、バルコニー改修、露出防水、外壁改修などとされている。
この間、改修技術、部材の進歩が飛躍的に進み、改修の現場では周期の12年は早すぎるという声が上がってきた。
10年近く前に、全国マンション管理組合連合会(全管連)では、マンション再生法要綱案の提起に続けて、改修技術の見直しなどのため建築士事務所、マンション管理会社の団体、建築コンサルタントなどを招き、論議した。
その際、全管連は、18年周期を提起し、意見を求めたが、12年周期は見直ししない現状追認の意見が過半だった。周期を延ばせば、保証期間にも影響するといった慎重論だった。
現場は保守的で、管理組合の立場とはかい離があるな、と参加した全管連の理事は感じたとのことである。
しかし、最近の大規模修繕工事の現場では、12年周期が基本では現場の感覚とずれていて、見直しを求めたいと言い切るコンサルタントもいる。
日住協が9年前からスタートさせた大規模修繕支援事業で大規模修繕工事を実施した43管理組合のデータでも、15年前後の周期が多かった。
高齢化の進む団地・マンションでは、修繕積立金の値上げが困難になり、駐車場も高齢者の運転免許返上で、空きが目立ってきた。駐車場収入は修繕費に繰り入れる管理組合が多いことから、修繕費会計も少なくなるばか
りだ。
ある設計コンサルタントの試算では、12年周期3回が18年周期は2回となり、大規模修繕工事を1回スキップすることができる計算になる。
URが管理する旧公団の賃貸団地は最近、大規模修繕工事は18年周期としている事実もある。
マンション管理センター発行の「マンション管理標準指針(平成17年12月)」では、「修繕周期は、立地条件等を加味した上で建物・設備の部材の耐用年数から推測し、いつの時点で修繕工事を行うかを修繕工事項目の部位ご
とに設定します。早すぎると過剰な修繕になりますし、遅すぎても劣化が進み工事費を増加させてしまうことも考えられます」とコメントしている。
国土交通省が15年前に示した大規模修繕工事の12年周期はすでに見直しの必要な時期である。速やかな検討を求めたい。 (NPO日住協論説委員会)
(大規模修繕工事新聞 2014-1.5 No.49)