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マンション設備の改修 <事例と解説> マンション設備のこぼれ話

ナイチンゲールの衛生改善活動 新型コロナウイルス対策に近い

 フローレンス・ナイチンゲール。この名前を、誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。ナイチンゲールが医療現場で行った行動は、単なる「白衣の天使であった」という柔和な表現とはおよそかけ離れた、壮絶な戦いであったと言えます。
 イギリス人であるナイチンゲールが、その功績を評価された行動期間は実はたった2年半。今から165年前に勃発したクリミア戦争で、野戦病院に従軍した期間です。
 野戦病院の状況は悲惨そのもので、負傷者は十分な医療を受けられず、痛みに発狂した奇声や怒号が飛び交い、負傷した脚は麻酔なしでノコギリで切断される、汚物があちらこちらに散乱する…そんな状況でした。そして、1855年2月には入院傷
病者の死亡率が42%にまで達してしまったのですが、そこからナイチンゲール他の看護婦たちの献身的な行動により、4月には14.5%、5月には5%、年末には2%にまで減少しました。
 当時においては、まさに奇跡だったのです。ナイチンゲール他の看護婦たちは、いったい何を行ったのか?
 まず不衛生で汚物まみれのトイレ掃除からはじめていったのです。そして、排泄物や排水物の除去清掃、害虫駆除、床壁の定期清掃、病床のこまめな清掃、室内の換気、汚れた衣服の洗濯等々。この昼夜いとわない献身的な行動が認められ、医療行為の補助者として立ち合い許可や、看護責任を任せられ、リネン用具や包帯などのこまめな交換が必要であるとの意見や要望を政府に具申。不衛生状態が一気に改善していきました。
 「献身的行動と結果数字」が政治や軍部を動かしたのです。戦争終結後、具体的に死亡要因が分析されましたが、野戦病院での死亡原因のほとんどが、戦傷や栄養失調では無く「感染症」であった、という分析結果を事実として見ることになりました。
 実は、ナイチンゲールは感染症が死因のほとんどであることを現場では知る由もありませんでした。しかし、戦地で実施した衛生改善活動はまさに理にかなっており、感染症を予防し、死亡率を劇的に下げたことを証明したのです。
 ナイチンゲールはイギリスに帰国後、ほどなくして心労による心臓発作で倒れ、その後ほとんどの時間を病床で暮らすことになりました。まさに一生の中で凝縮された2年半であり、この2年半のために世に送り出されてきた、とさえ思ってしまいます。
 今、新型コロナウイルスが流行していますが、日本は衛生面で世界1、2位を争う高度なレベルにあり、幸いにも死亡者数は先進国でも驚異的に少ない数字になっています。しかし、未知の感染病は、不安意識が経済を破綻させる、という新たな課題も顕著になりました。
 給排水設備は「衛生設備」とも言われます。ナイチンゲールは施設の給排水設備改善も、帰国後に提言しています。今一度水回りは、単なるきれい好き、という嗜好レベルではなく、感染を予防し衛生的な状態を保つ、感染防止機能を持たせる、という新たな概念がマンション衛生設備でも重要になってくるのではないでしょうか。
 ところで、もし新型コロナウイルスが蔓延したら、ナイチンゲールはどんな対策のアドバイスを送っていたでしょうか?
 庶民生活においては、手洗い、うがいをこまめに行い、汚れた医療品はこまめに取り換える、水回りやトイレは常に清掃を心がけて清潔に保つ、室内は換気を良く、食事はしっかりとって栄養を摂取、睡眠をしっかりとる、日光を浴びる…。
 医療従事者においては、使命感を持って一人ひとりの患者と向き合い、そして必ずすべての患者に対応した記録を残すこと。
こんなことを言っていたのではないでしょうか。
 今回の新型コロナウイルス対策の結論にかなり近いかも知れません。

大規模修繕工事新聞(127号)