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マンションバルコニーの物置撤去/山村弁護士法律相談(1)

Q1「マンションのバルコニーに物置を設置している居住者がいます。撤去をお願いすることはできるのでしょうか?」

 マンションのバルコニーは、構造上、専有部分(居室の内側等、区分所有権の目的となる建物の部分)に付属していますので、当該専有部分の所有者が専用使用することができます。そのため、バルコニーは居室の延長部分として専有部分にあたるとも考えられます。
 もっとも、バルコニーは、構造上、隣の住戸と接着して作られており、また、火災時等、緊急時の非難通路としても想定されています。
 このことから、一般的には、バルコニーはマンションの共用部分であると考えられています。
 では、バルコニーを共用部分と考えると、その利用はどれほど制限されるのでしょうか。
 この点につき、裁判例には、「バルコニーは建築構造上躯体の一部であり、管理上も共用部分と考えるのが一般的であるから、居室の居住者の専用使用権が認められるとしても、建物の居住者等の、緊急時の避難を妨げ、もしくは建物自体の維持、管理を妨げ、老朽化の原因となり、あるいは建物の美観を害するような利用は、その性質に照らしても予定されていないものと解するのが相当である」と判示したものがあります(東京地裁平成3年11月9日判決)。
 このように、緊急時の避難の妨害となるような利用や、建物自体の維持、管理を妨げる利用、老朽化の原因となるような利用、建物の美観を害するような利用は許されません。
 従って、バルコニーに若干の植木鉢を並べる程度のことは許されるでしょうが、緊急時の避難を妨げるような物置等の設置は許されないことになります。従って、本件においても、そのような場合であれば、物置を撤去させることができます。
 なお、バルコニーへの物置等の設置が禁止される理由は、上記のように、避難経路としての用途や美観という点にありますので、これらを害さないような、小型で、手すり位までの高さで、キャスターの付いた可動式のものであれば、許容される場合もあるでしょう。

(大規模修繕工事新聞 132号)