Q2) 前区分所有者の管理費滞納、購入した私が支払うの?
中古マンションを知り合いから直接個人売買で購入しました。ところが入居して間もなく前の区分所有者が管理費を滞納していることが分かりました。前の所有者が滞納した管理費まで支払わなければならないのでしょうか?
A2) 滞納の事実を知らなくても支払い義務負担することに
結論から言うと、払わなければなりません。
中古マンションの前の持ち主が管理費や修繕積立金等を滞納したまま当該マンションを売った場合、買主は、たとえそのような滞納の事実を知らなかったとしても、その支払い義務を負担することとされています(区分所有法8条)。
これは、集合建物を円滑に維持管理するため、他の区分所有者または管理者が当該区分所有者(前の持ち主)に対して有する債権の効力を強化する趣旨の規定です。
したがって、中古マンションを購入する際は、管理費や修繕積立金等の滞納について購入する前にちゃんと調査しておくことが重要です。
上記のとおり、中古マンションの買主は、前の持ち主が滞納していた管理費等の債務を引き受けることになりますが、このことによって、前の持ち主がその債務を免れることになるわけではありません。前の持ち主も管理費等の債務を引き続き負い続けます。
このように、買主が前の持ち主が負っていた債務を引き受けながらも、前の持ち主も引き継ぎ債務を負い、債務が免除されない債務の引き受け方を「重畳的債務引受」といいます。
また、管理費等の滞納のあるマンションを買い受けた者は、前の持ち主の管理費等の債務をいったん引き受けた以上、その後、当該マンションを第三者に売却しても、その債務の支払を免れることはできないと考えられています。
では、前の持ち主が滞納していた管理費を買主が管理組合に支払った場合、買主は、前の持ち主に対して、その分の支払を請求することができるのでしょうか。この点につき、マンションを競売で買い受けたケースについてですが、買い受けた者の責任は、前の持ち主に比して二次的、補完的なものに過ぎないから、前の持ち主がこれを全部負担すべきものであるとして、管理組合に支払った金額の全額を前の持ち主に求償することを認めた裁判例があります。
(大規模修繕工事新聞 133号)
山村行弘(やまむら・ゆきひろ)弁護士
平成28年、大空・山村法律事務所を開設。第一東京弁護士会刑事弁護委員、独立行政法人国民生活センター発刊『国民生活』の“暮らしの法律Q&A”( 2010年~ 2017年)、日本経済新聞「ホーム法務Q&A」(2018年1月~)の執筆担当。