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第49回管理組合セミナーをオンラインで開催/全建センター

 一般社団法人全国建物調査診断センター(全建センター)は12月20日、第49回管理組合オンライン・セミナーを開催し、約800人が参加しました。
 築30年以上のマンションが30%を超えた現代、全建センターではマンション居住者の安心の人生に「終の棲家プラン」を新たにご提案・展開してまいります。今回のセミナーは全建センター専属の3人の講師がそれぞれの立場で講演を行いました。

 講師の淵上氏は当日、6つの質問について説明しましたが、紙面の都合上、ここでは2つの質問に対する回答を掲載いたします。
■ 排水管更新工事費用が積立金を大幅に上回ることが判明。どうすればよいか…
排水管更新工事の内容をみると、排水管更新工事とは名ばかりで、実態は専有部分の内装工事がメインです。内装工事が思った以上に費用がかかるというので、積立金を大幅に上回ることになってしまうのです。
排水管更新工事でどういう部分が内装工事にあたるのかというと…
・トイレ便器の脱着
・トイレの床・壁の解体
・キッチンの解体
・キッチンの床・壁の解体
・洗面化粧台の移動
・洗濯パンの移動
・脱衣場の床・壁の解体
・ユニットバスの一部の開口
・その他内装工事の発生
 排水管更新工事の費用比率の実態は、排水管そのものの工事が全体の20%、付帯する内装工事で80%かかっています。また入室日数の実態は、排水管工事自体は2日間、内装工事は解体
して復旧するのにトータル4日間かかります。実際の内装工事の日にちもたくさんかかるというのが積立金を上回ってしまう実態なのです。
ではどうすればいいか。
排水管更新工事の費用比率を排水管工事100%、内装工事0%、つまり内装工事をできるだけ無くすというのが工事費用を縮小させる検討になると考えます。
結論としては、まずは「排水管更生工事」を検討すべきだと考えます。排水管更生とは、まだまだ使える排水管の内面をクリーニングし、樹脂をコーティングして、錆や汚れをつきにくくし、現在の配管をさらに長期間使用する工事です。
排水管工事の費用比較では、更新工事が100とすると、更生工事は50でだいたい納まります。工事費が積立金を上回らないようにするには、まずは更生工事から考えることが重要です。
■ 排水管更新工事、給水管更新工事、専有部分給水給湯管更新工事を同時に実施したほうがよいか?
 すべての給排水管を取り替えようとすると、当然専有部分内に入って、次ページの写真のように壁や床を壊す工事が入ります。こうした内装工事をやるのであれば、ついでにすべての配管を工事したほうが費用的にも労力的にも得だと提案してくるコンサルタントがいます。
本当に一気にすべてを取り替えた方が得なのか―排水管更新工事、給水管更新工事、専有部分給水給湯管更新工事を同時に実施した場合、工事費用は戸当たり200万~ 250万円くらい負担をしなければいけなくなります。
共用部分の排水管は更生工事でよいとすると戸当たり40万円、給水管は取り替えで戸当たり30万円、専有部分給水給湯管は更生でいきましょうとなると、戸当たり30万円。全体だと戸当たり100万円程度で収めることができるということになります。
結論として、排水管更新、給水管更新、専有部分給水給湯更新工事は、同時に実施しても得になりません。ただ工事金額が巨額になるだけです。決して管理組合が得をするということはありません。


 多くのマンションが建物としての高齢化と居住者の高齢化に悩み、その結果、財政的に大きな赤字への道を歩んでいます。
私見ですが、年間100管理組合の話を聞いて、その解決策を模索している中でひとつのポイントは、国土交通省が薦めているマンション管理に係る指針やガイドラインを誤解している人が多いということです。例えば長期修繕計画に出てくる工事の周期をみて、多くの方々はだいたい12年で大規模修繕をやらなければいけないと誤解しているケースが非常に多いといえます。今の修繕工事のレベル、材料の性能からすると、12年でおかしくなることはあまりありません。時期が来たから工事をするというようなやり方が収支バランスを崩し、財政を圧迫するのです。
今回は、建物としての高齢化と人的高齢化対策の両方から今後の対策を考えてみたいと思います。
■マンションの資産価値とは?
大規模修繕工事は何のためにやるのか―多くの人は資産維持の管理と答えますが、過去のデータから大規模修繕工事で販売価格が上昇したケースはほとんどありません。
 なぜなら減価償却が影響することも大きい上、そのことと工事をすることに相関関係はほぼないからです。
大規模修繕工事は何のためにやるのか―大規模修繕工事は、そのマンションに長く快適に暮らすための手段として改善していくことが目的です。そうなると、居住者が何を望んでいるかを把握することがとても大切になります。
内閣府による人口統計上、65歳以上の独身世帯は25%を超えています。特に全体の約10%にあたる男性の独居は社会コミュニティに参加できないことも多く、マンション管理にも影響しています。若い世代でも仕事やプライベートを重視するがため、無関心となりがちです。これでは良いマンションになりようがありません。
資産価値を語るならご近所付き合いからが大切。良いマンションにするには自立した管理組合となることが必要です。他人様が欲しがるマンションこそ、資産価値のあるマンションです。
■18年周期の優位性と実現方法
12年周期の従来の長期修繕計画ガイドライン通りに大規模修繕工事を行うと、それで「安心」という誤解が生まれ、結果として無駄なおカネを垂れ流すことになります。
建物としてきれいであることも大切ですが、そのために必要以上に高い修繕積立金設定は避けられます。従来のガイドラインと18年周期計画で作成した大まかな工事費用のシミュレーションを図にしました。
以上のように18年周期は数字的には確実に優位性が明らかです。ただし、自立的に毎年のメンテナンス計画を立案し、検討することが必須となります。
あまり知識のない居住者のみでこれらを進めることはなかなか大変です。全建センターのセカンドオピニオンはマンション管理に精通したプロの技術者が同じマンションに引っ越してきた感覚で皆様のフォローする制度です。ぜひご相談ください。

 


■「終の棲家」の実現のためには
 「終の棲家」の実現のためには、適時適切なタイミングでの計画修繕工事による維持保全が重要です。計画修繕の中でも大規模修繕工事ばかりに目が行きがちですが、そうした大規模修繕のサイクルを延ばす、あるいはより快適に暮らすためにも、適時適切なタイミングで小修繕を繰り返すことが必須であることはこれまでも何度か説明しています。
・ 一般修繕の状況にも目を配る→日常の小まめな手入れをして大きな不具合発生につながらないようにさせる
・ 管理状況に目を配る→給水ポンプや消防設備等管理メンテナンス対象部位がどのように修繕しているか把握する
・ 漏水事故原因や修繕工事等実施状況を確認する→大規模修繕工事内容や時期等にフィードバックする事項の有無についてアンテナを張る
 日常の小修繕を無駄なく効率的に実施するためには、不要不急の工事をしない、適正価格での工事を行う、理事が理解と納得のできる工事を行うことが重要です。
 そのためにも定期的な建物点検をして不具合個所や弱点を把握し、良いところ・長持ちするところをさらに延ばせるようにします。
■実例にみる小修繕の問題点
 小修繕は修繕積立金会計ではなく、管理費会計(一般会計)で予算が計上され、実施される管理組合がほとんどです。ただ積立金会計による計画修繕は大きな額が動くのでどうしても関心が高くなりますが、小修繕については関心の薄い理事が多く、おざなりになりやすいというような悪しき傾向があります。
 例えば、使用目的もはっきりしていないのに「修繕費」の項目として毎年相当な予算がとられているマンションがあります。ある年の管理費等収支計算書をみると、90万円の予算取りをしながら、42.5万円の支出とありました。実際はメンテナンスを行う管理会社からの提案でポンプを交換したようです。
ただ、価格が適切なのか、この時期に交換する必要があるのか(築6年目でした)、この2点について理事が理解と納得が得られるものなのかは焦点が当てられるものといえます。
 また別の年度で「修繕費」90万円の予算に対して、支出は12,000円でした。使用率1.3%、実に98.7%が無駄に計上されていたことになります。「使わなかったからよかった」ではなく、
「これだけ予算があるのだから使ってしまえ」という方向になったらどうでしょう?する必要のない工事ができるような環境があったとも考えられます。
 大規模修繕工事や修繕積立金の使用には慎重になる管理組合は多いですが、管理費会計からの小修繕については実にチェックが甘いです。こうした例は多数の管理組合でみられます。自身のマンションのこととしてとらえてほしいと思います。
■問題点の克服のために必要なこと
 自分たちの目でマンションを点検してみましょう。問題点克服のためには、まずは自分たちが所有しているマンションに何があるのかを知ることが重要です。多くの人は自分の住んでいる階以外は行ったことがなく、何があるのか知らないといえます。そのためにも自分たちの目でマンションを点検してみることをおすすめします。
 また、管理会社は維持管理上必要だからと言って小修繕の担い手になろうとしてきます。まずは管理会社との契約内容しっかり確認してみましょう。管理会社が小修繕の担い手にふさわ
しいのか客観的に判断し、適切な時期・適切な価格なのかを検討します。
 それが管理組合の自主・自立・主体性の第一歩となります。

(大規模工事工事新聞 133号)

2.大規模修繕工事検討のフローと失敗発生のタイミング


(1)管理組合の組織の構成:修繕委員会等の設置
大規模修繕のスタートは管理組合の組織の構成として修繕委員会等の設置が必要ですが、なり手がいない、専門知識が不足している、利害関係者が立候補してしまったなどが失敗発生の要因となります。

(2) パートナーの選定:設計・監理方式によるコンサルタントの選定採用
 大規模修繕に際しては少なからずの専門知識がどうしても必要となります。全くの素人の集まりだけで進められるほど簡単ではありません。そのため、一般的には次の段階として、コンサルタントの選定。採用になりますが、昨今、マスコミ等で騒がれているように、適切なパート ナー(=コンサルタント)を選定するのが難しいのが実情です。
コンサルタントの選定の仕方がわからない場合、どうしたらよいか?コンサルタント採用に際して、適正な価格はどのくらいか?コンサルタントの実績で判断する場合のポイントは何か?イメージだけで判断していないかなど色々な課題があります。

(3)調査診断による現状把握
大規模修繕の第一歩は、調査診断により現状把握を十分に行うことが大切です。人間の健康診断と同じで、この調査診断が的確でないと無駄・無理・失敗の原因となります。
 現状把握の不足、不具合が生じている場合の原因追跡の不足、居住者意見の公聴が十分でないなど、最初の調査診断の段階でミスをすると、大規模修繕の失敗につながります。

(4)設計検討、設計図書の作成
次の段階は設計検討、設計図書の作成となりますが、この段階を安易に考えると大規模修繕失敗の原因になりかねません。設計図書内容の把握が不十分だと、工事内容の誤解も起こりやすくなり、トラブル発生の要因になります。特に、工事内容やマンション規模に合致しない施工会社を選定してしまうことが心配のタネです。慎重・公正なる判断が大切ですが、そのためには必要十分で正確な情報の収集と選別が大切になります。

(5)総会開催:大規模修繕工事に関わる承認
施工会社が決まり、大規模修繕の概要が固まった段階で、総会を開いて、大規模修繕工事に関わるマンション居住者の承認を得る必要があります。
 総会では、もっぱら工事内容の説明に終始する議案説明と手落ちのある回答が目立ちます。この段階でマンション居住者のみなさんの合意形成が十分になされていないと大規模修繕工事の失敗につながります。

(6)工事説明会開催:居住者に対する説
居住者に対して工事説明会を開催するわけですが、往々にして、工事範囲をち密に伝えられない説明会が少なくありません。素人の居住者にも理解してもらえるよう丁寧な工事説明会開催に留意する必要があります。

(7)工事着工:契約書
次の段階として、工事契約書を交わして、工事着工を
するわけですが、この際、契約書内容の把握不足のため、後々大きなトラブルにつながることも少なくありません。コンサルタントなど、第三者のチェックを経て、十分に了解した上で契約することが大切なことは言うまでもありません。

(8)工事進捗の報告会議と問題点の協議

工事途中においては工事進捗の報告会議を定期的に行い、そのつど問題点がないか協議する必要があります。
 その際、発生する問題をすべて施工会社に解決を押し付けるだけでは、適切な問題解決の手法とは言えません。
 相互の信頼上で、問題を解決するのが失敗しない大規模修繕の秘訣です。

(9)工事竣工:引き渡し
工事が竣工し、引き渡しとなるわけですが、この際、引き渡し書類の内容を十分に確認する必要があります。
 この確認がいい加減であったり、不足していると、後々トラブルの原因となります。第三者の専門家にもチェックしてもらうことをおすすめします。

(10)瑕疵対応:アフターサービス点検
大規模修繕が終了したらすべておしまいというわけではありません。アフターサービス点検や瑕疵対応にも十分な配慮が不可欠です。
 とかく理事交代による情報伝達の不足やアフターサービス点検の煩雑さから逃れたいとう役員の姿勢や傾向も失敗のタネになります。

 

(大規模工事工事新聞 139号)