自立思考と自立管理
NPO法人日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』2020年12月5日付第459号「論談」よりり
斜面崩落事故の続報
管理組合は自立してほしいと、NPO日住協は繰り返し訴えている。管理組合自ら考えて行動することで、その目的を真に達成できる。多くの管理組合は管理会社に依存し、箸の上げ下げのようなことまでもが指示されている実態がある。管理組合はそれを不当とも思わず、むしろ親切と感じている場合もある。
神奈川・逗子の斜面崩落によって女子高生が死亡した事故について、毎日新聞が10月31日朝刊で詳細を続報した。
神奈川県への情報公開請求によって得た、亀裂の入った写真や県と管理会社双方の担当者のやり取りメモを入手し、それをもとにした内容である。
管理会社の役割
小欄は456号(9月5日)で「管理組合は危機意識を持とう」とのテーマで、この斜面崩落問題を取り上げた。
管理組合はマンションの立地を考え、定期的に斜面を観察するなど、リスクに対する感覚を持つべきであった。
新聞報道から感じるのは、管理会社の管理に対する意識の希薄さである。受託しているマンションの立地はもちろん、その他の特徴を十分に把握し、管理をそつなく行う必要がある。
広く浅く、しかし場合によっては狭く深く対象に迫る執拗さが管理ではなかろうか。
契約にないことには責任がないと言わんばかりのマンション管理業協会のコメントが紙面にある。
この期に及んで「逃げる」ことは業界として恥ずかしくないのだろうか。管理会社の使命の根底に、居住者の安全と安心の提供があるということを認識すべきだ。
契約になれば、そのことを管理組合に提案する必要があった。「さすがプロ!」と思われる管理に対する心とサービス品質を高めてほしい。身内をかばうだけでは信頼されない。
事故から様々な教訓を!
大切な命を奪った事故を他人事ではなく、管理組合も管理会社も自分ごととして真摯に考えなければならない。
管理会社の担当者が、県の担当者と交わしたやり取りが気になる。
斜面の調査日がいつなのかを県に問い合わせたが、それは何のためなのか、実際の斜面の状態がどうなのかを伝えておらず、主語や目的語がなく、会話がかみ合わないまま事故が起きた。
まるでこんにゃく問答なのだ。自己の使命の重要性が理解されていない。
斜面崩落事故からうかがえる危機管理の感覚。そこにあるのは、目の前に明らかに問題が見えないと問題を感じない、危機管理補足力の不足であり、自立思考力というべき、自ら考えて正しく行動することの欠如でもある。
事故から、このような教訓も得たい。
(NPO日住協論説委員会)
(大規模修繕工事新聞 133号)