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マンション修繕工事請負契約約款

 全国建物調査診断センターでは大規模修繕工事や給排水管設備工事をはじめ、管理組合からのあらゆる相談を受け付けています。その中で気になっているのが、施工会社の選定までには関心があるものの、その先の肝心な工事契約についてはほとんど知識のない管理組合が多いということです。
 工事の流れに沿ってアドバイスを行い、さて工事契約の段階になります。その際、今や業界では常識となっている『マンション修善工事請負契約約款』に基づいて説明するのですが、多くの管理組合の方がその存在すら知らないのです。実際の現場ではあまり定着していないのだと感じました。

 『マンション修善工事請負契約約款』とは、民間建築工事の請負契約約款をベースにマンションの共用部分が対象の外壁塗装、屋上防水、給排水管更新などの修繕工事の実情を反映したものです。
 工事範囲は基本的に改修工事が対象となります。また駐車場や付属棟などの増改築工事の発生も想定しています。
 契約書式モデルには、発注者や受注者、工事場所、工事期間、請負代金、支払い方法、監理業務の委託内容のほか、工事完成保証や大規模修繕工事瑕疵担保責任保険の欄等も盛り込まれています。
 マンションの大規模修繕工事では、この約款をもとにした契約書式が管理組合と施工会社の間で利用されることが一般的となっているのです。建築工事約款で作成した契約書はありえません。
 工事会社を選定する際、工事会社が用意する契約書について、「どの契約約款を参考に作っていますか?」と聞いてみましょう。そこでマンションの修繕工事に注力している工事会社かどうかがわかるかもしれません。

 『マンション修繕工事請負契約約款』は建築関連7団体選出の委員で構成された民間(七会)連合協定工事請負契約約款委員会が2016年4月に制定、発行しました。2020年4月に改訂版が出されています。
 大正12年に制定した「請負規程」から100年近い歴史を持ち、わが国で最も普及している民間建築工事の請負契約約款。その基本的な骨組みは変えずに、マンション修繕工事の実態に則した約款です。

(大規模修繕工事新聞 135号)

『マンション修繕工事請負契約約款』の概要
1)利用範囲
 本契約書類は、マンションの共用部分を対象に実施される、外壁修繕工事、屋上防水工事、給排水管の更新工事等の大規模修繕工事での利用を想定している。
2)発注者
 発注者は、分譲マンションにおけるマンション管理組合、賃貸マンションにおける個人あるいは企業を想定している。
 分譲マンションの場合の発注者は、正確には、管理組合が法人格を有している場合は管理組合法人、法人格を有していない場合は区分所有法に基づき定めた管理者である管理組合理事長となる。
3)受注者
 受注者は、原則建設業法に規定する建設業の許可を受けた者、具体的には総合建設会社、専門工事会社、マンション管理会社等が想定される。
4)監理者等
 監理業務等に関しては、管理組合が自ら行う場合もあるが、技術的検討等の専門的知識が要求されるため、コンサルタントの活用や、建築士事務所に委託する場合が想定される。
 本約款においては、発注者が「監理者等」を定めた場合には、「監理者等」の名称、その業務内容、業務範囲、業務責任等を書面で受注者に通知する義務規定を設けている。
 なお、建築基準法では、建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕を大規模の修繕と定義しており、そのような工事となる場合には、建築士資格を有する者に工事監理業務を委託する必要がある。
5)工事の規模等
 工事規模については、マンションの規模によっては、新築ビルに劣らない大規模な工事となることが想定される。
 また、基本的には、改修工事が対象となるが、状況によっては、駐車場や付属棟等、新築工事の発生も考えられる。

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