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管理組合への個別相談会を実施/全建センター

 一般社団法人全国建物調査診断センターは4月10日㈯、田島ルーフィング㈱東京支店会議室で個別相談会を実施しました。通常であれば管理組合セミナー後に行う相談会ですが、コロナ禍において多人数によるセミナーの開催を見合わせているため、3密を避けるなど感染予防を徹底した上で、希望のあった5管理組合についての相談を受け付けました。なお、掲載した相談事例は当日のものですが、個別マンションが特定できないよう、編集部により内容を再構成しています。

相談事例1

Q 3回目の大規模修繕工事
  まったくおカネが足りません
A 走りたがる人には特に注意
  時間止めて組合の体制づくりを


マンション概要:東京都文京区・築40年・64戸
相談者:理事
相談者:ワンルームタイプが40%で賃貸化も進んでいるマンションです。このたび大規模修繕工事の計画をはじめたのですが、まったくおカネが足りない現状にあります。マンション管理センターの長期修繕計画作成・修繕積立金算出サービスを利用して、これは大変だということになりました。
全建センター:何回目の大規模修繕工事なのですか?
相談者:今回で3回目になります。
全建センター:今、大規模修繕工事をやろうとした理由は?雨漏りや外内壁のはがれ、鉄部のサビなど、劣化がひどいから工事をしよう…いろいろ理由はあると思いますが。
相談者:特にはありません。強いて言えば今の長期修繕計画に沿っているので計画しようと管理会社から提案がありました。
全建センター:時期が来たからやろうでは、他の組合員の同意を得にくいといえます。本当に必要な工事なのでしょうか?
相談者:3年前に排水管更新を行い、再来年に給水管改修、5年後に汚水管改修をやる予定になっています。こんなにおカネがかかるのに、さらに大規模修繕工事もやるのはどうかなと思っています。
 実は、今ある長期修繕計画は総会の承認を得ていません。前の修繕委員長が作成し、「総会資料に付けた」と言っていますが、総会の議題にはなっていませんでした。
全建センター:少し話を変えます。3回目ともなると、これまでの経験から工事の手順もわかってきます。にもかかわらず、1回目、2回目について何も調べてなくて3回目どうしましょうという人が多い。これまでの工事を簡単に振り返ってみましょう。
相談者:私は最初から住んでいますが、マンションのことにはまったく無関心でした。工事についての噂みたいなことは聞いたことがありますが、その程度です。
 そこで今回はじめてマンションにお住まいの人々に聞き取りをしてみました。1回目の大規模修繕工事は、今は存続しているかわからない設計事務所が設計・監理を行い、地方に本社があるゼネコンが施工しました。
 2回目は、建設時の建築主であるスーパーゼネコンの子会社(リニューアル専門会社)の責任施工で工事を行ったようです。
全建センター:1回目の施工会社はどこから名前があがったんでしょうね?分譲主や建築主とも関係がない、修繕や改修の専門会社でもない。設計事務所もこんなのじゃ責任とれないといって逃げたのかもしれませんね。2回目は建築主に声をかけたようですが、主導していたのはそのときどきの理事会ですか?
相談者:建築士の資格を持っている方がいて、その方は賃貸に出していて外部に住んでいるのですが、一番古くからの修繕委員で、長く委員長でもありました。今の長期修繕計画もその方の居住する地方のゼネコンが作成したものです。
全建センター:建築士ということだけで、住民はその人を敬ってしまう傾向があります。建築士にも得意分野がありますが、マンションの改修を知らない建築士であっても住民に意見が通りやすい。いずれにせよ、1回目の大規模修繕工事からずっと先導役がいたようですね。
相談者:それが「工事についての噂」につながります。それを確かめようと私も理事に立候補しました。現在は、今住んでいる人だけで理事会が構成されるようになりました。建築士の計画をそのまま実行するわけにはいかないという気持ちです。進んでいる給水管・汚水管の改修も理事会で見積もりを取り直そうと思っています。
全建センター:現在の工事計画を否定するためだからといって、工事実施ありきで見積もりをとったり、設計事務所を決めたりしてはいけません。施工に向かって走りはじめてしまうと止まることが難しくなってしまいます。走りたがる人がいるときは特に気を付けてください。現実にそぐわず「とにかく工事を」というやり方は、本当に必要な工事から離れてしまいます。
 給水管・汚水管改修も3回目の大規模修繕工事もとりあえず「検討段階」として時間をつくり、その間に勉強会やセミナーに参加したり、専門書やインターネットで情報を集めたりしてはいかがでしょうか。
相談者:だた、これまで30年もの間、工事の実務を行ってきた人とどう折り合いをつけていいのかが悩みどころです。
全建センター:まずは時間稼ぎをして、これまでの修繕履歴(どういう工法でどのように行ってきたのか)の把握からはじめましょう。
 時間稼ぎには、全建センターの無料簡易診断制度を利用してみるのもよいと思います。目視程度のため精密ではないですがが、大規模修繕工事が今本当に必要なのかといった交渉材料をつくる手段にはなります。設備に関しても全建センターの設備担当者が現地で図面をみて判断をすることができます。
 こうして時間をいったん止めて現在の理事会や修繕委員の方々にマンションの工事について学んでもらい、一人の先導役がすべてを決めてしまうことのない管理組合の体制をつくることが肝心です。時間をかけてやりましょう。

【相談員】
 一般社団法人
 全国建物調査診断センター
 ・建築関係/
   佐藤成幸筆頭理事
   塩崎裕貞理事
 ・給排水設備関係/
   渕上和久理事

相談事例2

Q 管理会社提案の工事予算が
  組合の資産全額だった…???
A まず12年周期に疑問を持ち
  優先順位つけて工事時期の再検討を

マンション概要:千葉県松戸市・築23年・30戸

相談者:理事長、修繕委員
相談者:築12年目に第1回大規模修繕工事を行い、今回、築24年目になる来年に第2回大規模修繕工事を予定しています。ただ、管理会社の提案では、大規模修繕工事の予算が管理組合の資産全額だったことに驚いて相談に来ました。
全建センター:まず、なぜ築24年目に大規模修繕工事を実施しようと思ったのですか?喫緊に急ぐ必要があったのですか?
相談者:特にありません。長期修繕計画に沿ってこれまでも維持管理を行ってきました。
全建センター:これまで大規模修繕工事は「12年周期」が業界の通例でした。国土交通省の長期修繕計画ガイドラインも
「12年周期」で作成されています。このため、多くのマンションの長期修繕計画でも、これに則って築12年目、築24年目、築36年目…に大規模修繕工事を行うよう仕組まれているのです。
 全建センターでは業界に先駆け、新長期修繕計画による18年周期を提唱しています。使用する材料の品質向上とともに、定期検査と小修繕や補修を行うことで大規模修繕工事の周期を18年に延ばすことができるのです。
 実際の現場でも、15年周期を超えて大規模修繕工事をやる管理組合が増えています。
相談者:長期修繕計画にあり、管理会社の提案でもある工事の延期をどうやったら他の住民に説明できるでしょうか。
全建センター:長期修繕計画にあったとしても、①建物の劣化状態②資金計画などを理由に工事を延期するケースはたくさんあります。
 外壁・防水・鉄部等は全建センターの無料簡易診断制度をご提案できます。少なくとも5~6年以内に行ったほうがよい工事はどこか、優先順位をつけてはいかがでしょうか。近年内において施工すべき部位を、具体的な理由をもって優先順位をつけることをおすすめします。
 その上で大規模修繕工事の実施時期を改めて検討しても遅くはないと思います。

相談事例3

Q 機械式駐車場が満車にならない
  更新工事の費用捻出どうすれば?
A 先の工事の財政難も目に見える
  セカンドオピニオン制度で改善策を

マンション概要:神奈川県横浜市・築20年・27戸
相談者:理事長、副理事長
相談者:機械式駐車場の保守・点検について相談です。100%の付置率で27台あるのですが、竣工からずっと満車になったことがありません。
 このたび、管理会社から機械式駐車場の更新工事の提案がありました。現在は半分しか埋まっていません。費用の捻出をどうすればよいか相談させてください。
全建センター:まず、駐車場の保守・点検にかかる費用や月額使用料、繰り入れ先等を教えてください。
相談者:機械式駐車場は地下ピット3段スライド式で、現在は全27台中14台と契約しています。保守・点検は1回/2カ月、費用は年間60万円の支出です。
 駐車場使用料は月額一律15,000円で、管理規約では40%を管理費会計へ、60%を積立金会計へ繰り入れることになっています。保守・点検費用は管理費会計から支出し、柱やパレットの修繕等は大規模修繕工事と一緒に修繕積立金で行いました。
全建センター:実際の繰り入れはどうなっていますか?
相談者:管理費会計へは予算額通りに入れ、その残金を積立金会計に繰り入れています。このため、積立金会計は毎年赤字です。
全建センター:駐車場収入をあてに管理費会計の予算を組んでいると、当然積立金会計には回らず、資金計画はショートします。早急な更新工事は現実的ではないようですね。
 機械式駐車場の耐用年数は減価償却資産として15年と定められていますが、実際の機械式駐車場の更新工事は25年~ 30年で行われることが多いといえます。
相談者:あと5年~ 10年くらいの余裕があるようですが、今後はどのような対応をすればよいでしょうか?
全建センター:駐車場使用料は保守・点検費を除いて全額を積立金会計に充当できるよう、収支計算を見直してみてください。駐車場使用料がなくても日常管理に支障がないようにしておくことが健全な管理運営といえます。
 その上で、機械式駐車場を解体して平置きのみにするなど改善策を考えましょう。
 築20年であれば、機械式駐車場更新の前に2回目の大規模修繕工事が入ってきます。その際の財政難も目に見えるようなので、機械式駐車場の空き問題はすぐにでも取りかかったほうがよいと思います。
 全建センターのセカンドオピニオン制度は、管理会社とは別の観点から、新たな判断材料を提供するものです。理事会に常時出席して意見を述べることも可能なので、ご利用していただきたいと思います。

大規模修繕工事新聞 137号