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マンションの修繕積立金に関するガイドライン ポイントは計算式の見直しと㎡単価の更新1/国土交通省

国土交通省は9月28日、「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を改訂し、公表しました。改訂のポイントは、【修繕積立金額の目安に係る計算式の見直し】【目安とする修繕積立金の㎡単価の更新】です。ガイドラインの内容については、2022年4月からスタートするマンション管理計画認定制度の認定基準として用いることが予定されています。
ただし、修繕積立金の額は、マンションごとに様々な要因によって変動します。ガイドラインでも「あくまでも事例調査から導き出した目安」であり、「目安の範囲に収まっていないからといって、直ちに不適切であると判断される訳ではありません」としています。
平均額が自分のマンションの特色と合致するとは限りません。数字(金額)が独り歩きしないよう、それぞれのマンションに適した修繕積立金の金額設定に留意してガイドラインを参照してください。


【修繕積立金額の目安に係る計算式の見直し】
 「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」は平成23年に策定されました。今回、10年ぶりの改訂になります。平成23年度版ガイドラインは新築マンションの購入予定者を対象としていましたが、今回はこれに加え、既存マンションの区分所有者や購入予定者についても修繕積積立金の基本的な知識や金額の目安を参照とすることができる内容となっています。
 具体的には、長期修繕計画作成ガイドラインに概ね沿って作成された長期修繕計画の事例(366事例)を収集・分析し、長期修繕計画の計画期間全体に必要な修繕工事費の総額を、当該期間で積み立てる場合の専有面積(㎡)あたりの月額単価として示しています。
 長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の算出式を下記に示しました。
(算出式)
計画期間全体における修繕積立金の平均額(円/㎡・月)
Z=(A+B+C)÷X÷Y
【目安とする修繕積立金の㎡単価の更新】
 平成23年度版ガイドラインと比べると、目安とする修繕積立金の㎡単価がかなり高くなっています。
 これは既存マンションが目安データに含まれたことが、その要因のひとつにあります。特に1990年以前に竣工されたマンションが53.4%含まれています。古いマンションであればあるほど、経年とともに給排水管、エレベーター、機械式駐車場等の大がかりな修繕工事が増加します。
 社会情勢もその一端で、労務費の増加、足場の安全設備の付加、断熱防水の採用など、工事単価の高額化が㎡単価の値上がりに起因しています。
 また、注意したいのは、この㎡単価は各戸から集める修繕積立金の㎡単価ではなく、修繕積立金会計収入の㎡単価であるということです。
 専用庭使用料等も繰り入れた会計収入の㎡単価と、各戸から徴収する修繕積立金額の違いをきちんと理解して、参考にする必要があります。
 長期修繕計画に環境改善や省エネ改善、耐震化工事をどう組み込むかによっても、まったく異なる修繕積立金が算出されます。
 積立金額が算出された背景や理由をきちんと理解することが大事なことだといえます。

大規模修繕工事新聞 145号