アスベストによる健康障害の予防対策の一層の推進を図るため、2005年に石綿障害予防規則(石綿則)が制定されました。そして2020年、作業開始前の石綿含有の有無の事前調査、アスベスト除去等の改修工事を行う際に必要な措置などが改正。同時に大気汚染防止法も大幅に改正されました。これらの改正により、アスベスト対策が変化しています。
アスベストの調査や除去については、国やマンションが所在する自治体の事業を確認しておきましょう。
(大規模修繕工事新聞 147号)
あらかじめ吹付けアスベスト、吹付けロックウールを添加した建築材料は、著しく衛生上有害なものとして使用が禁止されています。使用制限の規制となるのは、その含有するアスベスト等の重量が建築材料の重量の0.1%を超えるものです。
既存の建築物については、修繕工事等の際にアスベスト等の除去が義務付けられています。
外壁等のアスベスト調査は、外壁を剥がすなどの作業が必要になりますが、粉塵が舞うことのないように調査部位を湿潤化し、採取します。鉄骨に吹付け材や耐火被覆が残っていることもあり、作業員の健康被害の発生を防ぐためにも、飛散防止は確実に行わなければなりません。
外壁のほかにも設備配管、機械室・電気室の天井・壁の吹付け材、内壁、長尺シート、シーリング材等、アスベストは広範囲に含まれているため、設計図書などからの事前調査での確認等が重要となるといえます。
また、大規模修繕工事を行う場合、工事対象部位以外は、例外として封じ込め工法や囲い込み工法の措置がみと認められていますが、工事対象部位については原則どおり、除去しなければなりません。
後に除去しなければならないものを残すと、改めて除去工事を行う際に余計な費用がかかってしまうことが考えられます。修繕計画にアスベスト除去費用を盛り込み、大規模修繕工事時に一斉にアスベスト問題の解決ができるようにしておくことが望ましいと言えるでしょう。
アスベストとは…
天然に存在する繊維状鉱物。石綿(いしわた)とも呼ばれる。まざまな建設資材に使われてきたが、アスベスト繊維を吸入すると、肺がんや中皮腫などの重篤な疾患が発症する恐れがあるため、現在では製造や使
用等が禁止されている。
2021年4月
・事前調査の結果は3年間の保存が義務づけられる。
・ アスベスト除去工事は事前に労働基準監督署に届け出る必要がある。
・ 除去工事後、資格者によるアスベストの取り残し確認をする必要がある。
・ アスベスト除去等の改修は、作業の実施状況を記録し、3年間の保存が義務づけられる。
2022年4月
・ 工事部分の床面積が80㎡以上の工事、請負金額が100万円以上の改修工事について、事前調査結果の労働基準監督署へ電子システムによる届出が必要となる。
2023年10月
・ 建築物の事前調査は、厚生労働大臣が定める講習を修了した者等が行う必要がある。
国土交通省/社会資本整備総合交付金等による支援住宅・建築物アスベスト改修事業
⑴アスベスト含有調査等
【対象】吹付けアスベストまたはアスベスト含有吹付けロックウールが施工されているおそれのある住宅・建築物
【国費率】10/10(限度額:原則25万円/棟)
【事業期限】 民間建築物:令和7年度末までを着手期限とする。
⑵アスベスト除去等
【対象】吹付けアスベストまたはアスベスト含有吹付けロックウールが施工されているおそれのある住宅・建築物
【国費率】民間事業者が実施する場合 :地方公共団体の補助額の1/2以内(かつ全体の1/3以内)
【事業期限】 民間建築物:令和7年度末までを着手期限とする。
アスベスト改修のイメージ
<除去工法>
吹付けアスベスト等を下地から取り除く方法。アスベスト含有建材を完全に除去するので、最も確実に建物を安全にする工法である。
<封じ込め工法>
アスベスト層を残したまま、薬剤を含浸したり、造膜材を散布し、吹付けアスベスト等を固定することで、飛散を防止する工法をいう。
<囲い込み工法>
アスベスト層を残したまま、板状材料等で覆うことで、粉じんの飛散や損傷防止等を図る工法をいう。
※イラスト/国土交通省「建築物のアスベスト安全対策の手引き」より