監事の発言の範囲と役割
NPO法人日本住宅管理組合協議会/集合住宅管理新聞『アメニティ』2022年5月5日付第476号「論談」より
理事会で理事長を互選しようと投票したら、AさんとBさんが同数になった。そこで、それでは監事の意見を聞いて決めようということになった。監事はどうすればいいのか。
監事は正常に業務が進行している間は、発言の必要はなく、しない方がいい。だからこの場合、意見を言わないのが正しい。
他にも大規模修繕工事の工事業者の決定など重要な判断の機会に理事の間に意見の相違が起こりうる。
そういう場合にどちらかの側についたら、監事の役割は果たせない。
◇チェック役に徹する
監事の業務は、理事会を中心に行われる管理組合の業務が、法律・規約・総会決議などに沿って正しく行われているか、会計の処理は予算に沿っているか、内容は正確かなどをチェックすることにある。
よくあることだが、人手不足の理事会から「監事も業務を手伝ってほしい」と声がかかることがある。善意で「手伝わなければ」との気分になるのは自然だが、そこは我慢してチェック業務に徹し、理事の仕事の応援には関与しないのが望ましい。関与すれば、その部分の監査は公平でなくなる恐れがある。
◇業務指導もしない
管理組合によっては理事長や副理事長を退任したら次の期は監事に就任するという慣例を持つところもある。
それはそれでよいが、この場合も監査業務に徹してほしい。先輩として、前期はこうやった、このやり方のほうが適切だなど「業務指導」に及ぶことがよくある。
しかし、それは越権行為である。前例を聞かれて過去の実例を伝える程度は許容範囲だと思われるが、現理事会の自主的な立場を尊重し、押し付けないよう配慮したい。
◇監事の権限とは
監事の中には、時に「理事会が言うことを聞かない」と嘆く人がいる。しかし、監事は、全組合員から任されて「理事会の業務をチェックする」という立場であって、理事会に命令することはできない。
監事の理事会に対する発言は、問題点の指摘や勧告にとどまるものである。また、監事の発言が正確でなく、見当違いのときもある。
いずれにしても、監事が解決を要する重要な問題点があると判断したら、総会を自ら招集して(権限がある)監事見解を総会で報告し、全組合員に判断してもらって結論をつけることになる。 (NPO日住協論説委員会)
(大規模修繕工事新聞150号)