近年、地震や台風、集中豪雨など局地的な自然災害が多発しています。
こうした災害が増える中、急傾斜地の崩壊等の被害対策も講じる必要があります。急傾斜地の防災工事は原則として、土地の所有者等が行わなければならないのです。
とはいえ、工事には多額の費用と専門技術を必要とすることから、放置しているケースが少なくありません。
しかしながら2020年に起こった逗子斜面崩落事件は今でも記憶に新しいといえます。地面の崩壊等を未然に防ぐためには、建築物だけでなく、敷地の維持管理も重要なのです。
多くの自治体では擁壁・がけの改修工事に対する助成や技術者等の無料派遣等の事業を設けています。
立地形態で該当するマンションでは、日頃から維持管理や安全化対策を行うためにも、専門技術を要するような場合は所在地の自治体に相談してみてはいかがでしょうか。
また、2019年10月の大型台風では神奈川・武蔵小杉のタワーマンションで浸水による全棟停電などの被災がありました。
災害により自分たちの命や財産を守ると同時に、第三者への損害の可能性も視野に入れなければならない状況になってきています。
自治体が作成するハザードマップなどから、マンションの所在地の被災リスクを確認し、管理組合内で情報を共有しておきましょう。
夏から秋にかけて発生する大型台風、ゲリラ豪雨の前の共用部分の防災チェックは、もはや危機管理として必須項目だと考えられます。
逗子斜面崩落事件の現状
復旧工事費は市が管理組合に貸付
2020年2月、神奈川・逗子市のマンション(2004年7月竣工・5階建て・38戸)である斜面が崩落し、女子高生が亡くなる痛ましい事件がありました。
事故があった斜面は逗子市が法面災害復旧工事を実施。2021年7月、工事が完了しました。工事費用は約3,850万円となり、市が管理組合に無利子・無担保で貸し付け、13年間で分割返済する内容で合意されています。
なお、被害者に対する民事訴訟は、総額1億1,800万円の損害賠償を求め現在も係争中です。
損害額の支払いは、管理組合が加入する施設賠償保険で賄えるかが今後のポイントといえそうです。保険で手当てができなければ、被害者に対する損賠賠償責任は区分所有者全員で負うことになります。
大規模修繕工事新聞8月号No.152